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(10/31)税制調査会

●新たなる「税制調査会」
 民主党マニフェストは、「税制改正過程の抜本改革」の項目を設け、「与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行う」という政策を掲げていました。
 この政策に従い、鳩山内閣は、9月29日付で「税制調査会の設置について」を閣議決定し、内閣府に、財務大臣を会長とする「税制調査会」を設置することを決めました。
 これを受けて、10月7日付で「内閣府本府組織令の一部を改正する政令」を公布し、従来の税制調査会(いわゆる政府税調)を正式に廃止するとともに、新たなる「税制調査会」をスタートさせました。
 第1回税制調査会は、10月8日に鳩山総理出席のもとで開催され、鳩山総理から藤井会長に対する「諮問文」が手交されました。
 (諮問文は、Tax-Opinion資料室「税制改正」に掲載しました。)

 その後、税制調査会は、本格的な審議を開始し、10月中に、第2回(10月20日)・第3回(10月22日)・第4回(10月27日)・第5回(10月29日)の会議を開催しています。
 今後は、毎週火曜日と木曜日に定例会議を開催し(11月中旬からは連日開催の可能性もある)、12月中旬頃までに平成22年度の税制改正方針を取りまとめる予定となっています。

 ところで、税制調査会(全体会議)は、マスコミの傍聴を認める等、原則公開で運営するほか、ホームページにおいて会議を実況中継するとともに、会議資料や議事録もリアルタイムで公表することとしています。
 (税制調査会HPをご参照下さい。)

 このように、新たなる「税制調査会」では、国民の見えるところで審議が行われることとなり、税制改正プロセスの透明化が促進される環境は整ったと言えます。
 ただし、「自民党税調のような一握りのベテラン議員が決定権を持つ仕組みは廃止したが、税調の最終的な決定方法は決まっていない。『最終的に全会一致で決めるのか、多数決で決めるのか、他の方法で決めるのか、まだわからない』と関係者は話す。」(10月28日。読売。)という点については未知数です。

●平成22年度税制改正要望の取扱いについて
 鳩山内閣は、各府省からの平成22年度税制改正要望の提出期限を10月末日としていました。
 これに伴い、各府省は、10月上旬~中旬にかけて、平成22年度税制改正要望を公募するとともに、必要なヒアリングを実施した上で、税制調査会に対して税制改正要望を行うことになりました。
 日税連は、この間、経済産業省・金融庁・総務省・財務省等に対して税制改正要望を提出したほか、10月21日には、経済産業省が実施した税制改正要望ヒアリングに出席して意見を述べています。
 さらに、10月27日には、第4回税制調査会の中で実施されたヒアリングに臨み、日税連としての税制改正要望を行いました。
 このヒアリングの状況も、税制調査会のHPを通じて、リアルタイムで審議中継が行われ(過去の審議中継の動画は1ヶ月間保存されています。)、配布した会議資料も即日公表されています。

●日税連の税制改正要望
 上述した通り、10月27日の第4回税制調査会に際して、各団体からのヒアリングが行われました。
 ヒアリングを行った団体は下記の通りです(発言順)。
  1.日本経済団体連合会
  2.日本商工会議所
  3.日本労働組合総連合
  4.日本税理士会連合会

 日税連は、井寺調査研究部長が、「平成22年度税制改正に関する建議書」を基に要望事項の説明を行いましたが、建議書掲載の26項目の中から、特に、下記5項目の重点要望事項を抽出して要望を行いました。
  1.給与所得控除の上限設定
  2.少額減価償却資産の取得価額基準の引上げ
  3.特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止
  4.交際費課税における交際費等の範囲の見直し等
  5.受取配当等の益金不算入制度の見直し

  (「平成22年度税制改正に関する重点要望事項」及び「平成22年度税制改正建議書の概要」は、Tax-Opinion資料室「税制改正」に掲載しました。)

 このうち、税理士会会員の関心の高い項目は、「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止」です。
 また、この事項は、民主党マニフェストにも明記されていますので、多くの会員が法改正の実現を期待しています。
 しかし、財政当局からは、減税に伴う財源を求められることも事実です。
 これらの点も勘案して、日税連は、重点要望事項の1番目に「給与所得控除の上限設定」を掲げました。
 もとより、日税連の税制改正要望は、税理士法上の建議権を根拠として行っているのであって、他の業界団体の税制改正要望とは一線を画するものです。
 本年度の建議書の前文にも、「税理士の使命」に基づく専門家としての意見表明であることから、「単に減税だけを求めるものではなく、次の『税制に対する基本的な視点』に立った税制の実現を希求するとともに、日常の税理士業務において納税者と接している専門家の立場から税務行政に関しても提言を行っており、公平かつ合理的な税制の確立と申告納税制度の維持・発展を目指すためのものである。」と記述しているところです。

 その意味で、いわゆる一人オーナー課税制度が設けられた経緯等も斟酌した上で、敢えて、給与所得控除について上限設定を求めるという増税要望を示すことにより「特使支配同族会社」に対する現行課税制度の廃止を強く求めたのです。
 なお、ヒアリングの質疑応答の中で、税調委員からの、給与所得控除の上限とする収入金額はいくらにすべきかという質問に対し、日税連井寺調査研究部長が「強いて言えば3千万円」としたのに対して、連合の南雲事務局長は「論議はしていないが2千万円」と回答していました。
 「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」は、平成18年度税制改正に際して突如として提案され、かつての自民党政権下の税制改正プロセスを経て立法化されたものですが、理論的にも実務的にも問題の多い制度であることからみて、平成22年度税制改正に際して、確実に廃止していただきたい項目です。
 今後の、税制調査会の審議の推移を見守りたいと思います。

●税制改正要望のあり方は一変した
 以上のとおり、今般の政権交代を機に、税制改正プロセスは大幅に変わることになりました。
 今後は、かつてのような与党税調の関係議員に対するロビー活動は、必ずしも功を奏しないのではないかと思います。
 日税連も、昨年までは、6月に機関決定した「税制改正建議」を、財務省・国税庁・総務省に提出した後、その実現に向けて、年末の税制改正大綱の決定までの間、日税政と共に、主に与党議員を中心に陳情活動を行ってきました。
 しかし、民主党政権における税制改正プロセスに対応するためには、従来の手法を根本的に見直さなければならないとことは間違いありません。
 日税連執行部に与えられた最重要課題だと思います。

(09/28)民主党政権

●政権交代の意義
 8月30日に実施された衆議院議員選挙において民主党が圧勝したことを受けて、歴史的な政権交代が実現しました。
 9月16日に発足した鳩山由紀夫内閣が本格的に始動し、マスコミは連日、政治主導を標榜する新政権の活動を伝えています。
 中でも、新設された「国家戦略局」(当面は「国家戦略室」)及び「行政刷新会議」がどのように機能するのかに注目が集まっています。
 また、従来、官僚中心に行われてきた政策立案を、各府省の閣僚・副大臣・政務官による「政務三役会議」が主導することとしている点もポイントの一つです。
 鳩山総理は、政権交代の中心的な意義について、「明治以来100年余の官僚主導体制を打破する革命的改革の実現にある」ことを繰り返し述べています。
 この理念のもとに、民主党のマニフェストを着実に実行していくことが鳩山内閣の最大の課題であることは間違いありません。
 新政権は、このブログのテーマである税制と税理士制度についても少なからず変革をもたらすことになると思います。

●税制改正の立案システムの変革
 民主党は、今般の衆議院議員選挙に際して、「政権政策Manifesto2009」と題するマニフェストとともに「政策集Index2009」を公表しました。
 この中に、「税制改正過程の抜本改革」という項目を設け、税制改正法案の立案システムをドラスティックに変革する次のような方針を明記しています。

1.与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行う。
2.地方税については、地方6団体・総務大臣・新たな政府税制調査会が対等の立場で協議を行う。
3.従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家としての中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置く。
4.衆参両院に税制を中心に社会保険料等も含めた歳入全般の議論を行う常任委員会として「歳入委員会」を新設する。

 これらはいずれも、強力な政治主導による税制改正を実現する観点から提案されたものだと思います。
このスキームが機能するためには、与党の政治家が税制改正に関する政策立案能力を発揮することが前提となります。
 そのためには、「新たな政府税制調査会」に所属する議員が税制に関する専門的な知見を持つと同時に、財務省や総務省の税制立案を担当する官僚が有する情報と能力を充分に活用することが極めて重要となります。
 また、国民の視点に立った税制改正を実現するために、「専門家委員会」の委員には、納税者の立場から大局的な意見を述べることができる人材を登用すべきです。
 したがって、財政当局の代弁者や業界団体等の利益代表者は適任とはいえないと思います。
 民主党が掲げる政治主導による税制改正の本質的な意義は、納税者の視点に立った税制の実現にほかなりません。
 そのためにも、日税連は、税務の専門家としての意見を税制改正法案の立案過程に反映させる観点から、「専門家委員会」に積極的にコミットしていくべきであると考えます。

●規制改革推進政策の行方
 旧政権は、長年にわたり、一貫して規制改革政策を推進してきました。
 この政策が、税理士制度を含む業務独占資格制度に対して多大な影響を与えてきたことは周知の通りです。
 とりわけ、2001年(平成13年)に発足した小泉政権は、「総合規制改革会議」(宮内義彦議長)を中心として、規制改革政策を積極的に推進してきました。
 日税連は、「サービス貿易自由化及び規制緩和等対策室」(現「規制改革対策特別委員会」)を中心として、「総合規制改革会議」(現「規制改革会議」草刈隆郎議長)をはじめとする政府機関との協議を通じて、税理士制度を維持発展する立場から対応をしてきました。

 ところで、「政府の規制改革会議が、民主党政権の誕生で転機を迎えている。前身の組織が自民党政権下で製造業への労働者派遣の解禁を提言。『経済財政諮問会議と同様。小泉改革路線の応援団だったとのイメージが強い』(政府関係者)」ため、新政権が廃止を含めた見直しに動くとの見方が出ているからだ。民主党は『現行の規制はゼロベースで見直す』と、規制緩和自体には前向きで、行政刷新会議などで検討する見通し。ただ、具体的な態勢整備はこれからで、関係者は新政権の出方を注視している。」(9月22日。東京新聞。)との観測もあり、規制改革会議の今後の行方は不透明な状況となっています。

 現に、規制改革会議は、本年7月末に「中間取りまとめ」を公表することとしていましたが、衆議院解散を機に、この方針を凍結しており、現在も今後の見通しは明らかにされていません。
 一方、鳩山内閣は、発足と同時に、内閣府に「行政刷新会議」を設置し、国の予算、制度その他の行政全般のあり方を刷新することとしています。
 「規制改革会議」の設置根拠は、「税制調査会」(いわゆる政府税調)と同様、「内閣府本府組織令」に基づいています。
 上述した通り、現在の「税制調査会」を廃止することは民主党マニフェストに明記されていますが、「規制改革会議」についても組織を変更することは十分に考えられます。
 その場合、規制改革政策の立案については、今後、「行政刷新会議」を中心に行われるのではないかと思います。

●新政権への対応
 以上検討した通り、政権交代により、政府の政策立案システムは大きく変わっていくことになります。
 日税連は、鳩山政権の方針について、あらゆる手段を通じて情報収集を行うとともに、適切に対応していかなければなりません。
 とりわけ、民主党とのパイプを確立することは急務です。
 9月18日に選任された日本税理士政治連盟の山川巽新会長の力強いリーダーシップを期待したいと思います。
 その上で、従来に増して、税制改正法案の立案過程への参画を進めるとともに、税理士制度を維持発展させるた観点から積極的な行動を展開することが重要であると考えます。

(08/21)税理士法改正

税理士法改正に関するプロジェクトチーム
 日税連は、8月6日に役員改選後初の正副会長会を開催し、「税理士法改正に関するプロジェクトチーム」(以下、「PT」といいます。)の設置を決定しました。
 PT設置要綱は、PTの趣旨について次のとおり記述しています。

 「税理士法については、平成13年改正から8年が経過し、この間の社会経済情勢の変化、規制改革の進展、他士業資格制度の改正などにより、税理士制度を取り巻く環境が大きく変化してきており、国民・納税者に対する利便性の向上を図り、一層信頼される制度とするべく、所要の見直しを行わなければならない。
 そこで、税理士法改正に関して具体的な方策を検討する機関として、会務執行細則第55条の3に基づき、補助分掌機関として『税理士法改正に関するプロジェクトチーム』を設置する。」

 PTの所掌は次のとおりです。
 (1)税理士法改正に関する基本方針及び行動計画の策定
 (2)税理士会員意見の集約及び税理士法改正要望書案の起草
 (3)行政機関(財務省・国税庁)、立法機関、政党、関係士業団体等との意見交換及び協議

 PTの構成メンバーは次の10名です。
 【座 長】
 宮口定雄 副会長(近畿)
 【副座長】
 川松保夫 副会長(東海
 山川  巽 副会長(東京
 【委 員】
 宮田義見 専務理事(近畿)
 高田住男 専務理事(千葉県)
 櫻井芙二雄 専務理事(名古屋
 神津信一 総務部長(東京)
 松原弘明 制度部長(九州北部)
 宮川雅夫 規制改革対策特別委員長(東京)
 小林健彦 会長指名委員(関信越)

●PT設置に至る経緯
 2007年7月に第1次池田執行部が発足した後、日税連制度部は、前執行部に引続き、来るべき税理士法改正に向けて検討を重ね、昨年3月21日付で、「『税理士法改正要望項目』(タタキ台)について」を会長宛に具申しました。
 この具申は、最優先項目として、①税理士の資格取得制度・あるべき試験制度、②税理士の信頼性の確保の2項目を挙げており、また、優先項目として、①補助税理士制度のあり方、②会計の専門家としての立場、③税理士会の自治のあり方、④税理士の代理権限、⑤職業賠償責任保険の義務化の5項目を掲げていました。
 池田会長は、この具申を受け、正副会長会における議論を踏まえ、昨年6月4日付で、制度部に対して、国税庁との協議における検討資料とするために、具体的なテーマを示して、「税理士法改正要望項目」(タタキ台)の再検討について諮問を行いました。
 その後、制度部は会長諮問に対する答申を行うため、精力的に審議を行い、本年1月21日に「中間答申」を提出した後、本年3月18日付で「『税理士法改正要望項目』(タタキ台)の再検討について(答申)」を会長宛に提出しました。

 答申は、①税理士の資格取得制度・あるべき試験制度、②新たな意見聴取制度に基づく書面添付制度の新設、③税理士制度の信頼性の確保、④補助税理士制度のあり方、⑤付随業務たる会計業務、⑥税理士会の自治のあり方、⑦税理士の代理権限、⑧職業賠償責任保険の義務化、⑨報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定の見直し、⑩税理士法人の一人法人・社員の無限連帯責任及び社員の競業禁止、⑪通知弁護士の公示、の11項目からなっています。

 この答申の取り扱いについて、3月及び6月の正副会長会で集中審議が行われました。
 その結果、本年7月に選任される新執行部のもとでPTを設置し、内容や文言の整理を行った上で、本年の秋を目途として、「タタキ台」を公表することになりました。

 この間の事情については、本年6月4日の常務理事会における会長挨拶の中で詳細に述べられています。
 以下に、この会長挨拶の要旨を引用しますのでご参照下さい。

 「6月3日、正副会長会において、税理士法改正要望項目について集中審議を行った。
 税理士法改正については、3月18日付で制度部から答申「税理士法改正要望項目(タタキ台)の再検討について」が提出された。
 平成13年5月25日の法改正から8年が経過しており、時代の変化に対応し社会の要請に応え得る税理士制度とするため、次なる税理士法改正に向け、着実な一歩を踏み出さなければならない。そのため、今回の制度部答申についてどのような形で公表するかを議論した。
 制度部答申は、平成13年改正以降の検討の結果をすべて盛り込んだものとなっており、最大限、尊重しなければならない。
 しかし、制度部答申では改正意見を一つにまとめきれず賛否両論が併記されており、これをそのまま公表することによって日税連の方針に疑問を持たれる可能性もあり、かえって混乱を来す懸念がある。
 法改正は税理士・税理士制度の将来に極めて大きな影響を与える。「タタキ台」として世に問うからには、相当程度の完成度が求められる。
 資格取得制度の見直しや試験制度の見直しは、隣接職業団体や、現在、受験を志している者、専門学校、大学院等にも影響を及ぼし、混乱を招くことにもなりかねない。
 既に日税連の法改正の動きに対して、規制改革会議のヒアリングで公認会計士協会から「税理士制度の導入の背景及び国際的な整合性の観点から公認会計士の資格をもって税務業務を行うことができる措置を求める。」との意見表明がなされている。
 法改正に当たっては、国税庁、財務省主税局、国会等の理解を得ながら進めなければならない。
 このような状況を踏まえ、まず法改正の必要性、緊急性、国民納税者等の理解等について日税連の考え方を一本化しなければならない。
 制度部答申の11項目を一つ一つ検討した結果、賛否両論のある答申をそのまま公表することは望ましくないとの結論に達し、また、現役員の任期は1カ月後の総会までであり、答申を再検討するには時間が足りない。よって、次期執行部で今年の秋を目途に内容や文言の整理を行い、公表することにしたい。
 すべての会員の意見が十分に反映され、社会から信頼される税理士制度を確立するためには足腰のしっかりした要望項目案を公表したい。
 会員のより一層の理解とご協力を改めてお願いする次第である。」

●税理士法改正までの道程
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)を受けて、各府省は、法令による規制の見直し年度・見直し周期を公表することとされており、財務省も、「規制にかかわる法律ごとに設定する見直し年度等一覧」を公表しています。
 その中に、「税理士法」の見直し周期は5年であり、次回の見直しは平成23年度であることが示されています。
 このことから、平成23年度に税理士法が改正されるのではないかと見る向きがありますが、この措置は、規制改革に関する法律の見直し時期を定めたものであり、政府が、この時期に税理士法改正を行うことを決めているわけではありません。
 しかし、先に紹介した会長挨拶にもあるとおり、平成13年の法改正以後、税理士制度を取り巻く環境が大きく変革していることを踏まえ、出来るだけ早期に、必要な法改正を行わなければなりません。
そのためには、税理士界内のコンセンサスを形成するとともに、行政機関や国会議員に理解を求め、協力を得なければなりません。
 そして何より重要なポイントは、多くの国民(納税者)に税理士法改正の必要性を認めていただくことです。
 PTは、これらの施策の司令塔として重要な役割を担うことになると思います。

(08/03)自民党マニフェスト

●「要約版」と「政権BANK」
 麻生太郎首相(自民党総裁)は、7月31日に、自民党本部で記者会見し、衆院選の政権公約(マニフェスト)を発表しました。
 自民党マニフェストは、「政策BANK」と題して網羅的に政策を掲載したものと「要約版」とがあり、「安心」「活力」「責任」の3分野について重点政策を示しています。
 (自民党マニフェストは、Tax-Opinion資料室「TOPICS」に掲載してあります。)

 自民党は、財政出動による経済対策に引き続き取り組むとし、具体的な目標として、①2010年度後半に年率2%の経済成長を実現する、②今後3年間で40兆~60兆円の需要を創出し、約200万人の雇用を確保する、③今後10年で各家庭の可処分所得を100万円増やし、1人当たりの国民所得を世界のトップクラスに引き上げることを明記しています。
 ただし、民主党マニフェストが「税制」に関して積極的な提言をしているのに比べ、自民党マニフェストの税制に関する記述は極めて抽象的な表現に留まっています。
 (民主党のマニフェストについては、7月30日のブログをご参照下さい。)

 以下、自民党の税制政策を検討してみたいと思います。

●税制抜本改革
 自民党マニフェスト「要約版」の10頁には、「歳入歳出改革や経済成長による税収アップを進め、今後10年以内に国と地方のプライマリーバランスの確実な黒字化を。また、地方財政の健全化も進めます。消費税を含む税の制度を、ムダ排除とともに経済の回復後に見直す準備を進めます。社会保障制度は、社会全体で適度な負担をお願いし、ちょうど良い福祉サービスを提供。消費税の社会保障・少子化対策への特化、社会保障番号・カードの導入など、堅固でわかりやすい制度へと進化させます。」と記述されています。

 この他、「政策BANK」第1項目の「安心な国民生活の構築」の中に、「税制抜本改革」という見出しを設けて、「消費税を含む、税制の抜本改革について、平成21年度税制改正法附則による道筋に沿って、平成23年度までに必要な法制上の措置を講じ、経済状況の好転後遅滞なく実施する。これにより、堅固で持続可能な「中福祉・中負担」の社会保障制度を構築する。」と記述されています。

 いずれにしても、税制改革の具体的な方向性は示されておらず、極めて曖昧なものになっています。
 基本的には、引続き経済対策を進めることとし、当面は国債発行に頼るが、景気回復後に消費税を含む税制抜本改革を実施するため、平成23年度(2011年度)までに必要な法制上の措置を講ずるということのようです。
 なお、自民党マニフェストの中に、「平成21年度税制改正法附則による道筋に沿って」という文言が明記されています。
 この附則の規定は、政府が昨年12月13日に閣議決定した「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム」(以下、「中期プログラム」という。)を受けて、本年の税制改正法に盛り込まれたものです。
 したがって、自民党の税制政策は「中期プログラム」の考え方を踏襲しているものと考えられます。
 (「中期プログラム」については、2008年12月30日のブログをご参照下さい。)

 その意味で、自民党の税制政策の方向性は、本年3月27日に衆議院において3分の2条項により可決された平成21年度の税制改正法附則の規定に表わされているとみるべきでしょう。
 以下、この附則の内容を紹介します。 

●平成21年度税制改正法附則
 「所得税法等の一部を改正する法律」附則第104条(税制の抜本的な改革に係る措置)第1項は、次のように規定しています。

 「政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。」

 そして、第3項において、上記の法制上の措置を行うに当たって、各税目別に検討する際の基本的方向性を示しています。
 以下にその概要を整理しておきます。

【個人所得課税】
*格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から検討する
*各種控除及び税率構造を見直す。
*最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げる。
*給付付き税額控除の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組みを行う。
子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担を軽減する。
金融所得課税の一体化を更に推進する。

法人課税】
*国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から検討する。
*社会保険料負担を含む企業の実施的な負担に留意する。
*課税ベースの拡大とともに法人の実効税率の引下げを検討する。

【消費課税】
*負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から検討する。
*消費税の全額が、年金・医療・介護の社会保障給付及び少子化対策に充てられることが予算・決算において明確にされることを前提に、消費税率を検討する。
*歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者に配慮する。

自動車関係諸税】
*簡素化を図る。
*厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえて、税制の在り方及び暫定税率を含む税率の在り方について総合的に見直し、負担の軽減を検討する。

【資産課税】
*格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処の観点から検討する。
*相続税の課税ベース、税率構造の見直し、負担の適正化を検討する。

【納税者番号】
*納税者番号制度の導入の準備を進め、納税者の利便性の向上及び課税の適正化を図る。

【地方税制】
*地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から検討する。
*地方消費税の充実を検討する。
*地方法人課税のあり方を見直す。
*税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税制の構築を進める。

【グリーン税制】
*低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直し)を推進する。

●いよいよ政権選択
 自民党・民主党をはじめ各党の選挙政策が出揃いました。
 政策は多岐にわたっており、税制だけが判断材料ではないとは思いますが、税制政策はこの国の行方を考える上で極めて重要なテーマだと思います。
 この間示された、各党の税制政策を良く見極めた上で、8月30日の投票に臨みたいと思います。

(07/30)民主党マニフェスト

●政権政策マニフェストと政策集インデックス
 民主党の鳩山由紀夫代表は、7月27日夕刻、ホテルニューオータニ大広間において、500人を超える報道関係者を前にマニフェスト(政権公約)を発表しました。
 民主党は、「政権政策Manifesto2009」と題すると24頁の冊子のほか、マニフェストと一体の「政策集Index2009」という57頁に及ぶ文書を合わせて公表しています。
 (これらの資料は、Tax-Opinion資料室「TOPICS」に掲載してあります。)

 マニフェストは「5つの約束」として、「無駄遣い」「子育て・教育」「年金・医療」「地域主権」「雇用・経済」の5分野について重点政策をまとめています。
 また、主要政策の工程表を作成し、来年度予算編成から、衆議院議員の任期が切れる2013年度までの4年間における政策の実施時期を明記しています。
 28日の各紙朝刊は、いずれも民主党のマニフェストを紹介するとともに、社説において様々な評価をしています。

 本稿では、民主党の政権公約のうち「税制」に関する記述をピックアップした上で、若干の検討を加えてみたいと思います。
 中には、かなりドラスティックな政策も含まれておりますが、今後の議論の参考にしていただければ幸いです。

●政権政策Manifesto2009に記載されている事項
【公平で簡素な税制をつくる】
*税制の既得権益を一掃する。
*租税特別措置の効果を検証し、税制の透明性・信頼性を高める。
*租税特別措置の適用対象を明確にし、その効果を検証する仕組みをつくる。
*効果の不明なもの、役割を終えた租税特別措置は廃止し、真に必要なものは「特別措置」から「恒久措置」へ切り替える。

【子ども手当】
*相対的に高所得者に有利な所得控除から、中・低所得者に有利な手当などへ切り替えることとし、年額312,000円の「子ども手当」を創設する。

【最低保障年金】
*消費税を財源とする「最低保障年金」を創設し、全ての人が7万円以上の年金を受け取れるようにする。
*「所得比例年金」を一定額以上受給できる人には「最低保障年金」を減額する。

【年金受給者の税負担】
*年金受給者の税負担を軽減し、高齢者の生活の安定を図る。
*公的年金控除の最低補償額を140万円に戻す。
*老年者控除50万円を復活させる。

【歳入庁】
*社会保険庁は国税庁と統合して「歳入庁」とし、税と保険料を一体的に徴収する。
*所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する。

自動車関連諸税の暫定税率】
*課税の根拠を失った暫定税率を廃止して、税制に対する国民の信頼を回復する。
*ガソリン税・軽油引取税・自動車重量税・自動車取得税の暫定税率を廃止し、2.5兆円の減税を実施する。
*ガソリン税・軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化する。
*自動車重量税は自動車税と一本化する。
*自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止する。

【NPO税制】
*市民が公益を担う社会を実現する観点から、認定NPO法人制度を見直し、寄付税制を拡充するとともに、認定手続きの簡素化、審査期間の短縮などを行う。

【中小企業税制】
*中小企業の法人税率を18%から11%に引き下げる。
*特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置は廃止する。

●政策集Index2009に記載されている事項
 「政権政策Manifesto2009」の記載の他、「政策集Index2009」の「税制」の項目に次の事項が明記されています。
 この政策は、民主党が昨年12月に公表した「税制抜本改革アクションプログラム」をベースにしています。
 (「民主党税制抜本改革案」については、1月6日のブログをご参照下さい。)

【税制改正過程の抜本改革】
*与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行う。
*地方税については、地方6団体・総務大臣・新たな政府税制調査会が対等の立場で協議を行う。
*従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家としての中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置く。
*衆参両院に税制を中心に社会保険料等も含めた歳入全般の議論を行う常任委員会として「歳入委員会」を新設する。

【税・社会保障共通の番号の導入】
*厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するため、真に支援の必要な人を政府が的確に把握し、その人に合った必要な支援を適時・適切に提供すると同時に、不要あるいは過度な社会保障の給付を回避することが求められる。
*このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入する。

【納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し】
*確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できる制度を導入する。
*納税者の権利を明確にするために「納税者権利憲章」を制定する。
*納税者側からの更正請求期間と課税庁側からの増額更正期間が異なっている点を見直す。

【国税不服審判所のあり方の見直し】
*納税者の権利を重視し、国税不服審判所のあり方や手続きを見直す。
*特に、審判官の多くを財務省・国税庁の出身者が占めていることは問題。

【所得税改革の推進】
*相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、税額控除、手当、給付付き税額控除への切り替えを行い、下への格差拡大を食い止める。
*人的控除については、「控除から手当へ」転換を進めることとし、子育て支援を社会全体で支える観点から、「配偶者控除」「扶養控除(特定扶養控除・老人扶養控除は除く)」を廃止し「子ども手当」へ転換する。
*給与所得控除については、特定支出控除を使いやすい形にするとともに、現在青天井となっている適用所得の上限を設ける等の見直しを行う。

【年金課税の見直し】
*「公的年金等控除」「老年者控除」は平成16年度改正以前の状態に戻す。

住宅ローン減税】
*住宅ローン控除については、バリアフリー化や省エネなどの社会のニーズの高い分野に重点的な負担軽減措置を設ける。

【給付付税額控除制度の導入】
*相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、必要な人に確実に支援ができる給付付き税額控除制度を導入する。
*ただし、不正還付・不正受給を防ぐためにも所得の正確な把握が必要であり、納税と社会保障給付に共通の番号制度の導入が前提となる。
*給付を受けることになる場合は、その給付額はまず社会保険料負担分と相殺することを検討する。

金融所得課税改革の推進】
*本来すべての所得を合算して課税する「総合課税」が望ましいが、金融資産の流動性等にかんがみ、当分の間は金融所得を分離課税とし、損益通算の範囲を拡大する。
証券税制の軽減税率は、経済金融情勢にかんがみ当面維持する。

【消費税改革の推進】
*消費税は税制赤字の穴埋めにはつかわないこととし、社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にする。
*現行税率(5%)を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当する。
*将来的には、「最低保障年金」や「医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とする。
*税率については、引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化する。
*インボイス制度を早急に導入する。
*逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入する。

【法人税改革の推進】
*租税特別措置の抜本的な見直しを行うが、課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していく。
*租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、時限措置から恒久的措置へと転換する。
*環境対策、雇用の維持・拡大、地域活性化などの重要課題への対応を法人税制の中で図ることを検討する。
*欠損金の繰戻還付制度の凍結を解除する。

【租税特別措置透明化法案の制定】
*租税特別措置については、減税措置の適用状況、政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定する。

【中小企業支援税制】
*中小企業の事業承継を重点的に支援する。
*中小企業に係る法人税の軽減税率は当分の間11%とする。
*特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置は廃止する。
*中小企業の規模に応じて、活性化や競争力の向上を支援する。

【特定非営利活動法人支援税制等の拡充】
*認定特定非営利活動法人制度については、要件緩和、認定手続きの簡素化、みなし寄付の損金算入限度額の引き上げ、寄付の税額控除制度創設など、支援税制を拡充する。
*所得税の寄付優遇税制については、税額控除制度を創設し、現行の所得控除制度との選択制とする。

【相続税・贈与税改革の推進】
*相続税については、「富の一部を社会に還元する」考え方に立つ「遺産課税方式」への転換を検討する。
*相続税の課税ベース、税率の見直しについては、中堅資産家層の育成に配慮しつつ検討する。
*現役世代への生前贈与による財産の有効活用などの視点を含めて、贈与税のあり方を見直す。

【国際連帯税】
*国境を超える特定の経済活動に課税し、集まった収入を貧困撲滅。途上国支援などを行う国際機関の財源とする「国際連帯税」について検討を進める。

【個別間接税改革の推進】
*個別間接税は速やかに整理し、消費税に一本化すべき。
*一方で、嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改める。

【酒税・たばこ税】
*酒税・たばこ税は、国民の健康確保を目的とする税に改めるべきであり、国民に分かりやすい仕組みにすることが必要。

【自動車関連諸税の整理・道路特定税源の一般財源化・地球温暖化対策税】
*自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止する。
*自動車重量税と自動車税は、保有税(地方税)に一本化する。
*ガソリン税等の燃料課税は、一般財源の「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化する。

【徴税の適正化】
*毎年1兆円の新規滞納が生じている現状にかんがみ、徴税の適正化を図る。
*罰則の強化や重加算税割合の引き上げを行う。
*消費税の不正還付を防止するための調査機能を強化する。
*「移転価格税制」については、企業活動の円滑化を図るため、速やかに関計各国と調整を行う体制を整えると同時に、租税条約の乱用等不適切な事案の摘発を強化する。

●いくつかの論点について・・・
【税制改正過程の抜本改革】
 民主党のマニフェストに記述されている、「与党税制調査会の廃止」「財務大臣の下に新たな政府税制調査会を設置」「新しい政府税制調査会の下に専門家委員会を設置」「歳入委員会の新設」は、いずれも、政治主導による税制改正を実現する観点からドラスティックに提案されたものだと思います。
 このスキームが機能するためには、与党(民主党)の政治家が、責任を持って税制改正に関する政策立案能力を発揮することが前提となります。
 そのためには、財務省や総務省の税制立案を担当する官僚が持っている能力と情報を充分に生かすことが重要です。
 なお、新たな専門委員会がどのようなイメージになるのか解りませんが、税務の専門家である税理士の意見を税制改正に反映するため、日税連はこの委員会に積極的にコミットしていくべきであると考えます。
 その場合、日税連の役割は格段に重要性を増すことになると思います。

【子ども手当】
 民主党マニフェストの最大の目玉です。
 今まで、所得控除は高所得者優遇となるので、税額控除に移行すべきという議論が行われてきましたが、配偶者控除と扶養控除を廃止して「子ども手当」に移行するというプランは、さらに一歩進んでいる政策だと思います。
 早くも、専業主婦のいる世帯は増税になるという反対キャンペーンが行われていますが、社会全体で子育て支援をするというコンセプトは基本的には正しいのではないでしょうか?

【最低保障年金】
 消費税を社会保障給付財源とするという政策は、自民党も同じだと思います。
 ただし、最低保障年金を完全に税方式とするかどうかという点が大問題だと思いまが、これにより将来の消費税率が決まってくるのではないでしょうか?

【消費税改革】
 消費税を社会保障財源とすることは良いとして、問題は、税率の引上げ幅と実施時期だと思います。
 近い将来、消費税率がアップすることは多くの国民が覚悟しているのではないでしょうか?
 この場合、①消費者の視点から「逆進性」にどうのように対応するか、②事業者の視点から「適正な転嫁」をどのように保障していくのかの2点が重要な課題になると考えます。
 逆進性緩和策としては、複数税率の導入が検討された経緯がありますが、民主党は、この問題に対して「給付付き消費税額控除」の導入を提案しています。
 また、仕入税額控除の方式を巡る議論も行われて久しいのですが、いまだにコンセンサスが形成できていないようです。
 因みに、民主党は、インボイス制度を早急に導入することとしています。
 なお、消費税改革に関する論点については、Tax-Opinion No.012に私見をまとめてありますのでご参照いただければ幸いです。

【歳入庁】
 税収入も社会保険料収入も国の歳入には変わりないのですから、歳入庁構想にも一定の妥当性があると思います。
 ただし、国税庁の職員と社会保険庁の職員が一緒に仕事ができるのかどうか甚だ疑問がある等、現実的にはハードルの高い政策ではないかと思います。
 また、余計なことかもしれませんが、将来、税理士制度と社会保険労務士制度がどうなっていくのか不安が頭をよぎります。

【納税者番号制度】
 民主党は、歳入庁構想をベースに、税と社会保障制度共通の番号制度を導入するとしています。
 また、「給付付き税額控除制度」の導入にあたっても番号制度が必要であるとしています。
 現在の政府税調も導入を見据えた検討をしている他、昨年12月に自民党が公表した「中期プログラム」でも、「納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便性の向上と課税の適正化を図る」と明記しています。
 したがって、このテーマは現実的な検討段階に入るものと思われます。
 その場合、情報保護制度をどのように構築するかが重要な課題となると考えられますので、充分な議論を行う必要があると思います。

【納税者権利憲章】
 民主党は、2001年6月に、日本版納税者権利憲章を制定するための国税通則法改正案を国会に提出した経緯があります。
 今般のマニフェストに記述されている「納税者権利憲章」は、この法案をベースに提案されているものと思われます。
 納税者権利憲章の制定は、納税者の権利を重視した税務行政を実施するために重要な意義があります。
 いずれにしても、諸外国では広く制定されているのですから、これを機に実効性のある制度を構築するための議論を進めていただきたいと思います。

【給与課税】
 民主党は、給与課税について、①給与所得控除の見直し、②特定支出控除の拡充、③年末調整の選択制導入等を提案しています。
 いずれも、サラリーマンにとって極めて大きな影響のある税制改正案です。
 改正されれば、所得税の確定申告事務が一変することになり、税理士会が行う税務支援も様変わりすることになると思います。

【租税特別措置】
 租税特別措置の見直しについては、数十年前から延々と議論されてきました。
 政権交代がなければ前に進まない課題だと思いますので、思い切った施策を期待したいと思います。

【中小企業税制】
 中小企業の法人税軽減税率の引下げ、特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置の廃止、事業承継税制の拡充等、いずれも大歓迎です。
 特に、法人税法35条の廃止は、民主党が議員立法で国会に提案したのに廃案となってしまった経緯がありますので、政権を取ったら真っ先に実行していただきたいと思います。

【道路特定財源】
 この論点は、平成20年度税制改正法案の取り扱いを巡って大問題となったところです。
 自動車関連諸税の暫定税率を10年間維持することとした政府与党と、その廃止を主張した民主党が、ねじれ国会の中で激しく対立し、平成20年(2008年)4月の1ヶ月間、暫定税率が廃止された後、衆議院3分の2による再可決によって元に戻ったいわくつきの問題です。
 なお、この論点については、暫定税率廃止の是非のほか、一般財源化についても議論されたのですが、現状ではその点が曖昧になっているように思います。
 道路特定財源については、2007年12月8日のブログに私見を記していますのでご参照下さい。

【相続税の課税方式】
 相続税については、一昨年12月に、自民党が公表した「平成20年度税制改正大綱」の中に、「新しい事業承継税制の制度化にあわせて、相続税の課税方式をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討する。」と記述されたことが契機となり、課税方式について様々な議論が行われました。
 日税連(税理士会)と財務省主税局も、昨年、「遺産取得課税方式」の是非について集中的な議論をしています。
 これに対して、民主党は、富の一部を社会に還元する考え方に立つ「遺産課税方式」への転換を検討するとしています。
 アメリカでは、2010年の一年間、連邦遺産税が廃止されます。
 このような状況にあって、わが国の相続税のあり方についても基本的な議論をする必要があると思います。

【国際連帯税】
 このテーマに関する議論は、最近始まったばかりです。
 2008年11月15日のブログに関連記事を掲載してありますのでご参照下さい。

(07/09)受験資格要件

●規制改革政策の経緯
 資格制度に関わる規制改革が問題とされる端緒となったのは、平成9年(1997年)12月に時の行政改革委員会が公表した「最終意見」でした。
 そこには次のような衝撃的な記述がされていました。
 「資格制度の業務独占規定により、特権意識を持った有資格者が特殊なムラ社会を形成し、競争を排除し、サービスの質の低下と価格の高止まりを招くので、自由競争を促進するために、無資格者にも市場を開放し国民の自己責任原則に基づく市場原理を導入すべきである。」

 その後、平成10年(1998年)1月に、「行政改革推進本部」(内閣総理大臣が本部長)の下に「規制緩和委員会」(宮内義彦委員長)が設置され、政府の規制緩和政策推進の司令塔としての役割を果たしてきました。
 規制緩和委員会は、精力的な検討を経て、同年12月に「第一次見解」を公表しました。
 この中に、業務独占資格等を中心とする資格制度の見直しの方向性が詳細に記述され、以来、税理士業界をはじめとする各士業団体と規制緩和委員会との壮烈なバトルが展開されることとなったのです。
 なお、「規制緩和委員会」は、平成11年(1999年)4月に「規制改革委員会」に名称変更、平成13年(2001年)4月に「総合規制改革会議」に改組、平成16年(2004年)4月に「規制改革・民間開放推進会議」に改組、平成19年(2007年)1月に「規制改革会議」に改組して現在に至っています。

●受験資格要件に関する検討経緯
 平成10年(1998年)12月の「第一次見解」は、資格制度の見直しについて様々な問題点を提起していましたが、その中に、「明確で合理的な理由のない受験資格要件については、その廃止を検討する。」と明記していました。
 この第一次見解は、そのまま、翌平成11年(1999年)3月の「規制緩和推進3カ年計画(改訂)」【閣議決定】に反映しています。
 このように、資格試験の受験資格要件については、参入規制の典型であるとの観点から、かなり早い時期から問題提起されていたのです。
 その後、各士業制度について、順次、廃止が進められました。
 昨年の段階で、受験資格要件が定められているのは、税理士試験と社会保険労務士試験の2士業のみとなったことから、昨年3月に閣議決定された「規制改革推進のための3か年計画」において、この2資格に対して、次のとおり見直しが求められました。
 「税理士試験の受験資格については、受験資格が学歴等で差別されないような仕組みが十分担保されているか否について速やかに検討を行い、結論を得る。」
 「社会保険労務士試験については、必要に応じて試験問題や試験制度全体の改革を念頭におきつつ、受験資格の見直しについて速やかに検討を行い、結論を得る。」

●税理士試験の受験資格に関する検討
 財務省は、上記の閣議決定を受け、税理士法第5条(税理士試験の受験資格)について、制度的な側面及び受験者等の状況について検証を行いました。
 その結果、「税理士試験の受験資格は、学歴等で差別されないような仕組みが十分担保されていると認められる。」との結論を得て、この検討結果を、平成20年(2008年)12月9日の国税審議会税理士分科会の議決を経てホームページにて公開しました。
 (この検討結果は、Tax-Opinion資料室「TOPICS」に掲載してあります。)

 この結論は、現行制度における受験資格要件が学歴等による差別がなされていないかどうかについて検証した上で導かれたものであり、その意味においては一定の妥当性があると考えられます。
 ただし、この検討にあたっては、公認会計士試験や司法試験の変革の影響は考慮されていません。
 したがって、この結論は、今後の税理士法改正の方向性を示すものではないとみるべきです。

●公認会計士試験の受験生の増加について
 ところで、平成15年(2003年)の公認会計士法改正により、平成18年(2006年)以降、公認会計士試験が大きく様変わりしました。
 旧試験は、第1次試験・第2次試験・第3次試験を行うこととしており、その中心的な試験である第2次試験については、第1次試験の合格又は学歴等による受験資格要件が設けられていました。
 これに対し、新試験は、短答式試験及び論文式試験による1段階2回の試験が実施されることとなり、事実上、学歴等による受験資格要件が撤廃されることとなりました。

 この制度改正は、税理士試験と公認会計士試験の受験生の動向に大きな影響を与えることになったようです。
 それぞれの受験者数の推移は次のとおりです。
 【税理士試験受験者数】
  平成17年度 56,314人 → 平成20年度 51,863人(4,451人減)
 【公認会計士試験受験者数】
  平成17年度 15,322人 → 平成20年度 21,168人(5,846人増)

 このように、多くの受験生が税理士試験から公認会計士試験へとシフトしている実態が明確になりました。
 この事態を放置することは、とりわけ若い世代の税理士試験受験者が減少していくことに繋がり、税理士制度の維持発展の観点から看過できないとして、税理士試験の受験資格を早急に見直すべきとする意見が強くなってきたのです。
 
●公認会計士協会の要望
 一方、日本公認会計士協会は、本年3月21日付で、公認会計士監査審査会及び金融庁に対して、下記項目を含む、「公認会計士試験制度に対する要望」を提出しています。

 「公認会計士試験については、試験制度の見直しの議論の中でも、公認会計士を巡る国際的な教育の基準との整合性に係る問題点が指摘されていました。また、国際財務報告基準(IFRS)を中心とした会計・監査の基準を巡る国際的な動向など、公認会計士を取り巻く環境は急激に変化してきております。
 これらの環境変化と3回の新制度下の試験実施実績を踏まえ、中長期的観点から公認会計士試験制度の再度の見直しが検討されるよう要望いたします。」

 この背景には、国際会計士連盟(IFAC)が定める「国際教育基準」(IES)が、会計職業専門家となるためには、会計専門教育の前に事前の教育レベルを備えていなければならず、会計専門家の教育プログラムに参加する者は、少なくとも、大学学位プログラムへの進学許可要件又はそれと同等である必要があると規定しているという事情があります。
 すなわち、公認会計士登録するまでに少なくとも大学卒業又はこれと同等の教育を受けていなければ、国際水準における会計職業専門家とは認められないということになるわけです。
 したがって、平成18年(2006年)以降の試験制度は、国際水準からみて問題のある制度となっているとの観点から、上記の要望に繋がったものとみることができるのです。

●税理士試験制度改革についても慎重な検討が望まれる
 政府の規制改革推進政策の一環として、資格試験の受験資格要件も順次緩和されてきました。
 公認会計士試験についても、おそらく金融庁主導により、ドラスティックな制度改革が進められたものと考えられます。
 社会保険労務士法もまた、受験資格要件を廃止する方向で検討が進められています。
 このような流れの中で、今後、税理士法改正の検討が進められていくわけですが、納税者の信頼を得るための税理士制度を再構築するためには、いたずらに規制改革の潮流に乗っていくだけではいけないのではないかと思うのです。
 たしかに、公認会計士試験制度改革は、我が業界に多大な影響を与えています。
 しかし、税理士試験の在り方を、今一度、根本から検討してから次の改正に進んでいっても遅くはないと思うのです。

(06/08)日本税理士政治連盟

●税政連の組織と財政のあり方に関するプロジェクトチーム
 日本税理士政治連盟(以下、「日税政」といいます。)は、昨年6月に、「税政連の組織と財政のあり方に関するプロジェクトチーム」(以下、「PT」といいます。)を設置しました。
 PTは、会長の諮問を受けて、①税政連の組織と財政のあり方に関する基本的な考え方、②日税政規約の分担金のあり方について検討を行い、本年3月に答申を取りまとめました。
 
 (PT答申の全文は、Tax-Opinion資料室「TOPICS」に掲載しました。)
 以下、PT答申の概要を紹介します。

【組織のあり方】
 税政連(及び日税政)は政治資金規正法上の政治団体に該当するが、税理士会(及び日税連)は税理士法に基づく特別法人であり、それぞれ設立根拠及び経緯が異なっている。
 法改正運動における役割は、税理士会(日税連)が税理士法上の「建議権」を行使して官公庁に対する建議を行い、税政連(日税政)が議会に対する要望を行うとの分担がされており、それぞれが両輪となって税理士界の要望を達成していく。
 いわゆる南九州税理士会最高裁判決を受けて、税理士会(日税連)は、税政連組織との区別を順次行ってきた。
 税政連(日税政)の活動の中心は、税理士会(日税連)の建議権の行使の延長線上にあるので、その両者は密接な関係を持って一体的に行動すべきである。
 したがって、税政連(日税政)は強制加入団体である税理士会(日税連)からの独立性を明確にすると同時に、両者が緊密に行動できる組織とすることが必要である。
 また、両団体の役員構成についても、それぞれの組織の独立性と協調性のバランスを取っていくことが求められる。

【財政のあり方】
 日税政は全国15の単位税政連により組織されており、その財政は各単位税政連が拠出する「分担金」により成り立っている。
 現行規約において各単位税政連が負担する分担金の算定基準は、当該単位税理士会の会員数×1,500円とされている。
 一方、各単位税政連の会費(又は分担金)は各地域の事情により異なっているが、10会が税理士会員数を算定基準としており、5会が税政連の実会員数を基準としている。
 このように、税政連の会員資格に関する基本的な考え方には、①税理士会会員をもって税政連会員とする意見と、②入会届を提出した税理士会員を税政連会員とする意見との2つがある。
 上記2意見の内、「当該単位税理士会の会員数」を基準とするとする方法が最も理解され易い基準と考えられる。
 ただし、日税政の財政が概ね健全に推移しているのに対し、単位税政連の多くは財政が悪化しており、一部の単位税政連では逼迫した状況にあることから、単位税政連の財政のあり方については最重要課題として対応しなければならない。
 そこで、単位税政連の会員の定義に関する規約に影響を与えない範囲で、単位税政連の財政健全化に資するよう緊急に対応することとした。

【具体的な提言】
 1.日税政と日税連との幹部におる定期協議の開催
 2.正副会長会への副幹事長の出席・担当副会長制の活用等による活性化
 3.より一層民主的・公正な役員選任のあり方について検討を継続
 4.組織活性化助成金を見直すとともに分担金の単価を1,500円から1,200円に減額

●日税政規約における分担金の基準について
 南九州税理士会最高裁判決(平成8年3月19日)は、「思想信条の自由」(憲法第19条)を保障する観点から、「強制加入団体である税理士会が、税政連の行う政治活動を行うための会費を徴収することは違憲である」ことを示しました。
 この判決を受け、税理士会と税政連のよって立つ所以を明らかにし、両者の関係が最高裁判決の趣旨に沿うように順次改善が図られてきました。
 特に、税政連は各税理士の意思により任意に加入するものであり、会費についても、税理士会会費が税理士法及び税理士会会則に基づいて強制徴収されるのに対し、税政連会費はあくまでも個々の税理士の意思に基づく寄付金であることが明確にされました。

 これに伴い、日税政の規約をかつての「会費」から「分担金」に変更しましたが、その算定基準は相変わらず税理士会会員の数に拠っていました。
 そのため、組織率の低い単位税政連にあっては、収入に対する日税政分担金の負担割合が過重となり、単位税政連の財政が脆弱となることから、分担金の算定基準を、現行の「当該単位税理士会の会員数」から、「当該単位税理士政治連盟の会員である税理士の数」に変更すべきであるという意見が提起されていました。

 この問題については、従来、様々な議論が行われてきました。
 たしかに、単位税政連の収入は、基本的には実会員数に比例するのですから、日税政分担金の算定基準も単位税政連の実会員数に拠るのが合理的であることは間違いありません。
 しかし、実際には、実会員の把握は極めて難しいという実態があります。
 既存の会員を含めて加入届を提出してもらうことは組織拡大の方策として現実的とは言えないので、実務上は、会費を納入した者を会員とみなす等の方法を取るしかありません。
 また、税政連への加入は任意であるうえ、会費も基本的には寄付であることから、会員名簿を作成することは困難だと思います。
 このような状況の中で、分担金の基準を実会員数に変更すると、組織率の高い単位税政連ほど日税政分担金の負担が重くなるという新たな不公平が生じてしまいます。

 今般のPT答申は、「本来の税政連の組織化及び税理士会との表裏一体の理念からは、最も理解され易い基準と考えられる。」と記載して、税理士会の会員数を基準とする現行規約を維持することとしています。
 日税政の活動の成果は、税政連に加入している税理士に限らずすべての税理士が享受するという考え方に立つとするならば、この説明には一定の説得力があるように思います。
 一方、実会員数を基準とする方法に対しては、入会届による確認及び規約上の会員の定義の統一に相当の時間がかかることから否定的な見解を示しています。
 また、税政連会費を納めた会員の数を基準とすると、会費収納率の変動が大きくマイナスとなり財務運営を困難とする可能性があるとしています。
 ただし、日税政の財政が概ね健全に推移している一方で、多くの単位税政連の財政が悪化している現状を改善するために、分担金の単価を引下げることにより対処することとしたようです。

●日税連と日税政の関係について
 上述した通り、南九州税理士会最高裁判決は、税政連の会員の資格及び会費のあり方という基本的な事項について問題提起をいたしました。
 この判決を受け、各税理士会、日税連、単位税政連及び日税政は、これらの問題について様々な観点から議論を積み重ねてきました。
 しかし、PT答申が述べている通り、南九州訴訟は、税政連の目的や活動の意義が争点になったのではなく、最高裁判決によって税政連の活動が税理士会の建議権を支えていることに異論をはさむものではありません。
 すなわち、税理士会の会員がそのまま税政連会員となるような運用や、税理士会が税政連会費の徴収事務を行うようなことは戒めなければなりませんが、税政連が税理士会の意向に従って活動を行うことは全く問題ないと考えるべきです。
 判決以来、やや税政連の活動に対する税理士会の関与を、過剰に制限するような考え方があったように思いますが、税理士会が決めた方針に従って税政連が政治活動を行うという基本的な両者の関係を再確認しなければなりません。
 この意味で、PT答申が、税政連と税理士会の関係について、「組織の独立性のみならず両組織の協調性という二つの判断基準によりバランスをとっていくことが求められる。」と明記したことは重要です。
 具体的な提言に盛り込まれた、「日税政と日税連との幹部におる定期協議の開催」は、早速実現したい施策です。
 これまでも、「税制改正要望書」の決定にあたっては、日税連の調査研究部長・担当専務、及び、日税政の幹事長・政策委員長等による協議が行われてきましたが、必ずしもオフィシャルなものではありませんでした。
 「税制改正要望書」は、日税連の税制改正建議書のダイジェスト版であることからみても、その決定にあたっては、両組織の正式な協議を経ることが望ましいと思います。


(05/12)規制改革会議

●規制改革推進のための閣議決定
 我が国における一連の規制改革論議の端緒となったのは、平成6年12月に発足した「行政改革委員会」による検討を踏まえ、平成7年に閣議決定された「規制緩和推進3カ年計画」でした。
 この閣議決定は、「我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会としていくことを基本として、あらゆる分野における規制緩和等を計画的に推進すること」を目的としていました。
 以来、政府は一貫して規制改革政策を推進してきました。
 平成10年には、「行政改革本部」(内閣総理大臣が本部長)内に「規制緩和委員会」(宮内義彦委員長)が設置され、政府の規制緩和政策の推進に大きな影響を与えることとなりました。
 「規制緩和委員会」は、その後、「規制改革委員会」→「総合規制改革会議」→「規制改革・民間開放推進会議」→「規制改革会議」へと組織を変更していますが、これらの政府機関による検討結果が年末に答申され、その政策が翌年3月の閣議決定において政府の方針となるという基本的な流れは変わっていません。
 規制改革の分野は多岐にわたりますが、「業務独占資格」についても度々問題提起がなされ、各士業法の改正に大きな影響を与えてきたのです。

 税理士制度については、平成11年12月の「規制改革についての第2次見解」(規制改革委員会)を経て決定された「規制緩和推進3カ年計画(再改訂)」(平成12年3月閣議決定)及び「規制改革推進3か年計画」(平成13年3月閣議決定)において次のような措置事項が定められました。
 ①税務訴訟における補佐人制度の創設
 ②受験資格要件の緩和
 ③試験免除制度の見直し
 ④資格者団体の業務及び財務情報の公開
 ⑤資格者団体の役員に資格者以外の者を任用
 ⑥会則による報酬規定の廃止
 ⑦会則による広告規制の見直し
 ⑧税理士法人制度の創設

 これらはいずれも、平成13年税理士法改正等に反映しています。

 その後、平成18年には、税理士の労働者派遣の解禁が検討されました。
 最近も、①懲戒処分の適正な実施、②資格者法人の設立要件の緩和、③資格者に関する実務実績等の情報の開示、④税理士試験の受験資格の見直し等が指摘されています。

 (政府機関の答申及び閣議決定については、Tax-Opinion資料室「規制改革」をご参照下さい。)

●規制改革推進政策の行方
 このように、各省庁は、規制改革推進に関する閣議決定を受けて、所管する法令改正等を実施してきました。
 とりわけ、小泉政権の時代には、官邸主導によりドラスティックな規制改革が進められました。
 その後、政権が安倍内閣→福田内閣→麻生内閣へと変遷するにつれ、政府与党の政策決定プロセスに変化が生じてきたように思います。

 本年1月30日の参議院本会議で、自由民主党の尾辻秀次参議院議員会長は次のような代表質問を行いました。

 「政府は、規制改革を目指して平成6年12月に行政改革委員会を発足させております。以来、会議は名称を変えつつ継続され、数度にわたって、派遣対象業務の原則自由化など、段階的に労働者派遣法を変えてきました。
 私は、この間の会議の在り方に強い疑念を持っております。発足当時から委員として会議に参画し、数度の取りまとめに当たったのは、企業の一経営者であります。経営者の視点で規制改革が進められ、その結果、派遣の大量打切りとなり、多くの人を失業に追い込んだのであります。私たちの決議が、政府にだけでなく、企業にも注文を付けているゆえんであります。これほどの厳しい事態を招いたことについて、規制改革会議は少なくとも結果の責任を取らなければなりません。
 さらに、規制改革会議には言っておかねばならないことがあります。それは、会議が自らの主張をするのは自由ですが、その主張が己の利権につながっているという疑惑を持たれてはいけないということです。小泉改革を利権にしたと言われてはいけません。規制改革会議でそのことを主張した人の関係会社が、真っ先に株式会社の病院を造ったと言われています。
 規制改革会議に問いたい。医療を自らのビジネスチャンスにしていませんか。理容、美容保育にも手を伸ばそうとしていませんか。介護の世界を利益追求の場としてむさぼり、自家用ジェット機を買った会長がいたことを忘れてはいませんか。バス、タクシーの事故が増えたことに対する反省はないのですか。」

 (途中省略)

 「経済財政諮問会議については、昨年の質問でも国会決議など無視すればいいのだと言い放ったその傲慢さに触れました。経済財政諮問会議は、新自由主義、市場原理主義を唱えてまいりました。平たく言えば、日本をアメリカのような国にすればいいのだと言ってきたのであります。それが間違いであったことは、今回の世界の不況が証明をいたしました。その責任は重く、私は経済財政諮問会議と規制改革会議を廃止すべきと考えますが、総理はどのような総括をしておられるのか、お尋ねをいたします。
 また、このように審議会を隠れみのにするやり方を改めて、政治と政府が前面に出て責任を明確にすべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。」

 これに対する麻生総理の答弁は次の通りです。

 「経済諮問会議及び規制改革会議についてお尋ねがありました。
 経済財政諮問会議及び規制改革会議におきましては、経済財政政策の重要事項や構造改革に必要な規制の在り方について精力的な調査、審議を行い、時々の内閣が抱える課題の解決に向け大きな貢献を果たしてきたものと認識をいたしております。今後とも、これらの会議において現在の我が国経済が直面する課題の克服に向け精力的な調査、審議を行いたいと考えております。
 なお、これらの会議は内閣総理大臣の諮問に応じ、調査、審議を行う組織であります。内閣としての最終的な政策決定は、総理の下に関係閣僚も合意して閣議において行われるところであります。」

 さらに、本年3月6日の参議院予算委員会でも、自由民主党の岩永浩美議員が、規制改革会議の廃止を求めました。
 これに対して、与謝野馨財務・金融・経済相は、「一時期、規制緩和はすべて善であるという信心がはやったが、間違った信心だ。」と述べています。

 小泉政権のもとで首相官邸が経済財政政策を主導する仕組みとして機能してきた「経済財政諮問会議」と「規制改革会議」は、かつての各省庁と与党の事前協議をベースにした政策決定プロセスを大きく変革させました。
 しかし、自民党内部から、この仕組みに対して異論が出始めたようです。

 このような潮流に対して、「規制改革会議も牙を抜かれた虎のようだ。医療、教育、農業など改革への抵抗が強い分野ほど成果をあげるのが難しくなっている。官邸の支えがないので、それぞれの規制を担当する官庁の幹部は会議側の提言をやり過ごすのが恒常化している。」(3月10日。日経。)との指摘がなされています。

●規制改革推進のための3か年計画(再改定)【閣議決定】
 以上のように、「規制改革会議」の位置づけが変化してきている中で、本年もまた、3月31日付で、「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」が閣議決定されました。
 「法務・資格」分野については、①資格者法人の設立要件の緩和、②業務範囲の見直し、③ADR法の弁護士の助言措置の適正な解釈・運用の周知徹底、④法曹人口の拡大等、⑤民法(債権法)の改正について、⑥会社法制の継続的見直しについて、⑦その他が掲げられています。

 ただし、今年度の閣議決定は、資格制度に対する基本的な考え方を維持してはいるものの、税理士制度について、新たに具体的な措置を求める事項は盛り込んでいません。
 また、4月2日に改定された、「規制改革の運営方針」(規制改革会議)においても、資格制度は、「集中テーマ」の中には含まれておらず、「一般テーマ」において、合意済の措置事項のフォローアップ活動を行うとの記述にとどめられています。
 ただし、毎年6月及び10月に実施されている「規制改革集中受付月間」における規制改革要望の受付(いわゆる「あじさい」「もみじ」)を定着化させるという方針が示されていますので、この活動により新たな課題が提起される可能性もあります。

 いずれにしても、資格制度に関する規制改革の旗が降ろされたわけではありませんので、今後も情報収集に努めつつその動向を注視していく必要があると思います。


(04/26)東京税理士会役員選挙

●当選御礼
 4月1日に公示された東京税理士会役員選挙に当たり、宮川雅夫は、「東京税理士会日本橋支部」及び「税理士界を明るくする会」の推薦のほか、税理士界を支えてこられた先輩、一緒に勉強してきた仲間、そして、次世代を担う青年税理士など多くの皆様の応援をいただき副会長に立候補しました。
 4月22日の投票日までの間厳しい選挙戦を戦いましたが、お陰さまで、1,345票のご支持をいただき第3位にて当選することができました。
 ご支援いただいた皆様に衷心より御礼申し上げます。

 また、選挙期間中は、東京税理士会役員選挙規則第27条(選挙運動の禁止事項)に抵触する可能性があったため、このブログの更新を停止していましたが、本日より再開したいと思います。

●選挙政策
 今般の選挙で、私は、「会員の声を東京会に!」というスローガンを掲げさせていただきました。
 規制改革や税務行政の効率化等の大きな流れの中で税理士制度が大きく変革しようとしている今、特定の組織に属さない多くの会員の声を東京会や日税連に届けたいという思いで、下記の政策を訴えました。

 第1は、「税理士法改正への対応」です。
 平成13年の税理士法改正からほぼ10年経過する機を捉え、前回検討が不十分だった点や、今日の社会経済の環境変化に対応するため、必要な法改正を目指すべきです。
 特に重要な課題は次のとおりです。
 ①税理士制度の信頼性を確保する公正な資格取得制度の改革
 ②次世代会員を支援するための補助税理士制度・登録制度の改正
 ③多くの受験生がチャレンジし易くなる税理士試験制度の改変。
 ④納税者に有用となる書面添付制度の導入。
 ⑤税理士業務の質の維持・向上を図る研修制度の整備改善。

 第2は、「税理士業界の世代交代の促進」です。
 現在の税理士界は、若手会員の活力をもっともっと活かすべきです。
 私はこれまで、今日の税理士制度の礎を作ってきた先輩達の背中を見ながら、制度論を勉強してきましたが、今後は、明日の税理士業界を担う次世代の皆様に、制度発展のための戦いを引継いでいくという重要な役割を担っていきたいと思います。

 第3は、「民主的な議論の復活」です。
 かつての東京税理士会は、理事会や支部長会を中心に、制度問題や会務運営について、突っ込んだ議論が行われていました。
 しかし、ここ数年、議論が足りないように思います。
 民主主義の基本は、様々な意見を聞き、徹底的な議論をし、その上で決定した事項には皆が従うというところにあります。
 先輩の貴重な意見もお聞きしなければなりませんが、日頃は会務に参加できない多くの皆様の声こそ大切にすべきだと思います。

●副会長の職務
 今般の選挙は、会長については山川巽現会長お一人が立候補されましたので、公示日に当選が確定していました。
 副会長については、定数5名のところに6名が立候補しましたが、私以外の5名の候補者は、「時代を拓く税理士の会」の推薦を受けていました。
 そのため、選挙戦は、「時代を拓く税理士の会」の5名の候補者に対して、「税理士界を明るくする会」の推薦を受けた私が挑戦するという様相になりました。
 そのためか、私に対して、「会長を支えず、もっぱら批判する方が副会長になっては、会務執行に支障をきたす」という心配の声がありました。
 私は、そのような声に対して、特定の会派が会務を独占することは税理士会のためにはならないという立場から反論をさせていただきました。

 副会長の職務について、「副会長は会長の定めるところにより、会長を補佐し、会務を掌理する」と規定されています(東京税理士会会則第17条)。
 私は、「会長の補佐」とは、必ずしもイエスマンになるということではないと考えています。
 様々な会員の声を会長に伝えることも補佐の一つだと思いますし、自分の意見が会長の意見と異なる場合にはこれを表明し具申することも重要な役目だと思います。
 したがって、正副会長会や常務理事会等で熱い議論をすることがあるかもしれませんが、建設的な議論であれば徹底的に行うべきだと思います。
 私は、副会長に就任した後、以上のような姿勢をもって山川会長を補佐していきたいと考えています。

(02/21)資格取得制度

税理士資格取得制度改革の論点
 本年1月21日に日税連制度部が取りまとめた「『税理士法改正要望項目』(タタキ台)について(中間答申)」(以下「中間答申」といいます。)は、「税理士となる資格を有する弁護士・公認会計士は、それぞれの資格における専門家としての資質の検証は行われているが、税務に関する専門家としての資質の検証はされていない。国民納税者の利便性や安全性の確保の観点からは、税理士業務を行うに必要な専門知識や能力を有することを個別に検証することとすべきである。」と記述し、「税理士の資格取得制度」の改革のための法改正を求めています。

 (日税連制度部の「中間答申」は、Tax-Opinion資料室「税理士制度」に掲載してあります。)

 税理士の資格取得制度改革に関する論点は、①弁護士に対する資格付与、②公認会計士に対する資格付与、③税務官公署勤務経験者に対する資格付与の3点に区分されます。
 この内、弁護士及び公認会計士に関する論点は、税理士法(以下、「法」といいます。)第3条の資格付与要件の見直しに関する問題です。
 また、これに関連して、法第8条の税理士試験の一部科目免除規定の見直しが必要となると考えられます。

 大方の意見は、税理士と弁護士・公認会計士はそれぞれ異なる使命を持っているのだから、その資質の検証もそれぞれ異なる方法によるべきであるとし、弁護士及び公認会計士に対して無条件に税理士資格を付与することとしている現行法を見直すべきであるというものです。
 同時に、弁護士及び公認会計士については、法第8条(試験科目の一部免除)において整理することとし、基本的には、弁護士については税法科目のみを、公認会計士については会計学科目のみを免除することとすべきという意見が多いように思います。
 また、税務官公署勤務経験者については、現行法第8条第1項第10号による会計学科目の免除を見直すべきとする意見が大勢です。

●弁護士に対する税理士資格の付与 
 弁護士法第3条第2項は、「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」と定めており、「税理士の事務」(弁護士法では、税理士法の「業務」に相当する文言を「事務」と呼んでいます。)が弁護士の職務範囲であることを明確にしています。
 ところで、昭和26年に、税務代理士法改正案としての税理士法案が国会に上程されたときの議員立法原案は、当時の弁護士法第3条第2項の「弁護士は、当然、税務代理士の事務を行うことができる。」という規定の削除を求めていました。
 しかし、国会審議の課程で、①税理士の事務は弁護士の一般法律事務そのものであって、本来、可能とされる職務を税理士法により規制する必要はない、②弁護士は、裁判所や法務省の監督も受けず、所属弁護士会の監督を受けるに止まっており、税理士法による国税庁長官の監督に服することは不当である等の反対意見が出されたため、衆議院大蔵委員会において原案が修正され、税務代理士を税理士と読み替えた上で弁護士法第3条第2項を存置するとともに、法第51条(通知弁護士制度)が設けられることになった経緯があります。
 したがって、弁護士が、弁護士法の規定を根拠に税理士業務を行うことを、税理士法が制限することは法体系上無理があると思います。
 ただし、弁護士が弁護士法に基づいて税理士業務を行うためには、法第51条に基づく国税局長に対する通知は徹底されなければなりません。

 しかし、弁護士が、弁護士の名称をもって税理士業務を行うことの是非と、弁護士に対して無条件で税理士資格を付与することの是非は別問題と考えるべきです。
 日税連制度部の「中間答申」も、「弁護士は、会計に関する能力担保がなされていないことから、税理士としての資格を付与するには、会計科目の試験に合格することを要することとする」と記述しています。
 平成18年に施行された会社法は、税理士に対して会計参与となる資格を付与しました。
 この法制度との整合性からみても、弁護士に対して、会計に関する資質の検証を経ずに税理士資格を付与することは不合理だと考えられます。

●公認会計士に対する税理士資格の付与
 公認会計士法は、平成15年の改正により、第1条(公認会計士の使命)を新設し、「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」という規定を設けました。
 同時に、この使命規定との整合性を図るため公認会計士試験制度を大幅に改革する法改正を行い、平成18年度より実施しています。

 税理士と公認会計士は、ともに会計の素養を必要とする専門家である点で共通していますが、その社会的使命は異なっています。
 また、新たな公認会計士試験の論文式試験の中に、「租税法(法人税等)」が加えられることになりましたが、この科目は、公認会計士が会社等の監査を行うために必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として設けられているのであって、税務の専門家としての学識及びその応用能力を有するかどうか判定するために設けられているものではありません。
 したがって、公認会計士に対して、無条件で税理士資格を付与することとしている現行制度には合理性は認められないと考えられます。
 具体的には、公認会計士に対して税理士試験を付与するためには、税理士試験の税法科目の合格を要件とすべきだと思います。

●税務官公署勤務経験者に対する税理士試験の一部科目免除
 税務官公署勤務経験者に対しては、法第8条第1項第4号~9号により、その勤務経験の内容及び従事期間に応じて税理士試験の税法科目の免除規定が設けられています。
 さらに、同条同項第10号により、所定の勤務経験者(国税事務に23年以上従事した場合等)については、「国税審議会の指定した研修」を修了することにより会計学科目が免除されることになっています。
 なお、「国税審議会の指定した研修」については、税理士法において、税理士試験の会計学科目に合格するための成績を得た者が有する学識と同程度のものを習得することができるものと認めて指定したものでなければならない旨が定められています。
 また、税理士法施行規則第2条の5において、指定研修の要件として、①官公署がその職員に対し必要な職務上の訓練として行う研修であること。 ②「会計科目」を必修とする研修であること。 ③会計科目について、高度の研修を行うものであること。 ④研修の内容を習得するのに必要かつ十分な研修時間が確保されていること。 ⑤会計科目に係る研修の効果を測定するために試験が行われ、その試験に合格することが研修の修了要件とされていること。を定めています。

 したがって、この制度が立法趣旨に則って運用されている限り、税理士試験の免除規定として著しく不合理であるとは言えないのではないかという意見もあります。
 一方で、税理士試験の会計学科目の水準と指定研修の修了試験の水準が、必ずしも同程度にはなっていないという指摘があるうえ、税務官公署勤務経験者については法第8条第1項各号の組み合わせにより、結果的に全科目免除となることから、税理士資格取得制度としては不適切であるという強い意見があります。
 日税連制度部の「中間答申」も、「税務官公署行政事務経験者で一定の者については、会計科目の免除の見直しを検討する」としています。

●法改正を実現するために
 以上の通り、税理士資格取得制度については、次期税理士法改正の重要な課題の一つになると思われます。
 ただし、立法に当たっては、法改正の必要性を説得力ある理論によって立証しなければなりません。
 基本的には、国民のための税理士制度として維持発展させていくために、現行制度の弊害を説明すると同時に、国民の利便性の向上に繋がる改正であることを証明しなければなりません。
 その場合、例えば、試験合格者の不公平感であるとか、税理士資格付与対象者が増加することによる業界秩序の混乱等は理由にならないことを知らなければなりません。
 また、この法改正は、それぞれの既得権を侵害する内容を伴うことになりますので、関係各省庁や各団体等との十分な協議をしなければならないことも考える必要があります。

(01/23)書面添付制度

税理士法を改正して書面添付制度を抜本改革すべきだ
 日税連制度部は、本年1月21日付で、「『税理士法改正要望項目』(タタキ台)について(中間答申)」(以下「中間答申」といいます。)を取りまとめ、1月22日の正副会長会に報告しました。

 (日税連制度部の「中間答申」は、Tax-Opinion資料室「税理士制度」に掲載してあります。)

 今後、この「中間答申」を基にさらに議論を深めた上で、制度部から「最終答申」が示されることになります。
 池田会長は、「最終答申」の結果を踏まえ、法改正への具体的な取り組み方針等を検討するためのプロジェクトチームを設置することを明らかにしています。
 税理士法(以下「法」といいます。)の改正課題はいくつかありますが、「中間答申」が優先して取り上げるべき改正項目の一つとして掲げている論点が、「新たな書面添付制度と意見聴取制度の構築」です。

 書面添付制度は、昭和31年の法改正により創設されて以来、昭和55年・平成13年の法改正による制度改革を経て現在に至っていますが、この制度の普及率は未だに5%台に過ぎません。
 昨年6月13日、日税連及び国税庁は、1年余にわたる協議を経て、「書面添付制度の普及・定着」に関する合意をしました。
 この合意に基づき、国税庁は、6月24日付で、「税理士法第30条及び第33条の2に規定する書面の様式の制定について(法令解釈通達)」を改正して添付書面の様式を改訂するとともに、書面による調査省略通知を行う等の運用改善を図ることとしました。
 また、「税理士法の一部改正に伴う新書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」(以下、「事務運営指針」といいます。)の改正も予定しているようです。
 さらに、税務職員に対して書面添付制度の周知徹底に努めることを明らかにしています。
 一方、日税連は、業務対策部において、「記載内容が良好な書面」の基準策定を進めるとともに、税理士会会員に対する書面添付制度の周知及び研修の充実を図ることとしています。

 このように、最近になって、国税庁及び日税連ともに、書面添付制度の普及・定着に向けた施策を積極的に推進しています。
 しかし、この制度は、その法的位置付けが曖昧であるという本質的な問題を内在しているため、現行法の枠内における普及・定着には限界があるように思います。
 そこで、この制度の普及・定着を推進する施策を実施する一方で、税理士の代理権限の強化を図る観点から、法33条の2及び法35条の戦略的な改正を検討すべきであると考えます。

●書面添付制度創設の経緯
 書面添付制度の起源は、昭和31年改正により創設された「計算事項等を記載した書面の添付」(法33条の2)及び「更正前の意見聴取制度」(法35)です。
 これらの制度創設の背景には、当時、日税連が、「税務計算書類の監査証明を税理士業務に加えること」を要望していたという事情がありました。 
 この要望を受けて、国税庁は、「税理士が課税標準又は税額の計算の適否について監査証明をすることを業とすることができること」という試案を示していました。
 このように、当時、日税連及び国税庁は、いわゆる税務監査制度の導入を熱心に求めていたのです。
 これに対して大蔵省は、「公認会計士による財務書類の監査と異なり、税務書類については税務官公署が最終的監査を行うのであるから制度上第三者たる独立職業人の監査証明を必ずしも必要とされない」としながらも、「税務書類の作成に独立会計人が関与し、その責任を明らかにすることは税務官公署との間において納税義務の円滑化をはかる上において効果的である」との見解を示していました。
 結局、昭和31年改正法は、「計算事項等を記載した書面の添付制度」を創設し、税理士が、申告書の作成に関してどの程度内容を調査し、責任を持って作成したものであるかについて、その責任の程度を明らかにするとともに、税務に関する専門家である税理士が計算し、整理し、又は相談に応じた事項を記載した書面を添付できるようにし、税務行政庁もこれを尊重することとしたのです。
 また、税務官公署は、添付書面が添付されている申告書について更正を行う場合には、その添付書面を作成した税理士に意見を述べる機会を与えなければならないこととしたわけです。

●事前通知前の意見聴取制度の創設
 その後、昭和55年法改正において「審査事項等を記載した書面添付制度」を創設しました。
しかし、これらの制度は、長年にわたり殆ど利用されることはありませんでした。
 平成13年法改正時の国会審議において、国税庁は、書面添付制度の普及率が0.6%(平成4年)に過ぎなかったことを明らかにしており、その原因について、①税理士の側から書面を添付する顧客と添付しない顧客とを選別することになり納税者との信頼関係を損なう懸念があったこと、②書面添付がある場合には更正前に税理士の意見を聴取するという制度ではさほどのメリットとはならないこと、③書面に虚偽記載があった場合には懲戒の対象となること等の理由が複合的にあったためであると説明しています。
 このように、いくつかの原因があったのですが、「更正前の意見聴取制度」は税理士及び納税者にとってさほどのメリットではなかったことが最大の要因だったのではないかと思います。
 何故なら、更正処分は税務調査を実施した上で行われるのですから、書面添付をしなくても、税理士は税務調査の立会いを通じて意見を述べる機会が事実上保障されていることに加え、税務調査において非違事項の指摘があった場合に必ずしも更正処分が行われるのではなく、実務上は、税務官公署職員の慫慂により修正申告書を提出することが多いという事情があるからです。
 そこで平成13年改正法は、「事前通知前の意見聴取制度」を創設し、書面添付制度の法的メリットを拡充することにより、この制度の普及を図ることとしたのです。

●新書面添付制度の意義
 法35条1項(事前通知前の意見聴取)は次のように規定しています。
  *添付書面が添付されている申告書について、
  *納税者に対する事前通知を行って「実地調査」を予定している場合で、
  *税務代理権限証書を提出している税理士(税理士法人)があるときは、
 【税務官公署の当該職員は】
  *納税者に対して事前通知する前に、
  *税務代理権限証書を提出している税理士(税理士法人)に対して、
  *添付書面の記載事項に関して、
  *意見を述べる機会を与えなければならない。

 平成13年改正法は、書面添付制度の内容(法33条の2)は変更しなかったのですが、「事前通知前の意見聴取制度」(法35)を新設したことにより、書面添付制度の法律上の効果を拡大させ、その実質的な意義を大きく変革させたのです。

 その立法趣旨は、国会審議の過程で度々確認されたように、「税務の専門家である税理士の立場をより尊重し、税務行政の一層の円滑化・簡素化を図ること」にありました。
 このことは、改正法施行直前の平成14年3月14日に発遣された「事務運営指針」において、「新書面添付制度を活用した調査事務の効率的運営」に関する次のような記述により明らかにされています。

 「法第33条の2の書面は、申告書審理や準備調査に積極的に活用するほか、書面の記載内容のうち確認を要する部分については、法第35条第1項に規定する意見聴取の際に十分聴取するよう努める。また、新書面添付制度は、税務当局が税務の専門家である税理士の立場をより尊重し、税務執行の一層の円滑化・簡素化に資するとの趣旨によるものであることから、法第33条の2の書面の記載内容がその趣旨にかなったものと認められる場合には、じ後の調査の要否の判断において積極的に活用し、調査事務の効率的な運営を図る。」

 国税庁がこのような方針を採用した背景には、行政改革の流れの中にあって定員増が期待できないところで、IT化や国際化等による経済取引の複雑化・高度化に対応しなければならないため、旧来のような調査手法を中心とする税務行政を見直す必要があったのだと思います。

 現に、ここ数年の実地調査率をみると、例えば、法人税の場合には5%前後で推移しており、実に約95%が実地調査省略となっている実態があるのです。
 このことは、税務行政において課税の公平を確保するためには、実地調査対象の選定が極めて重要であることを示唆しています。
 新書面添付制度は、「添付書面の記載内容」及び「事前通知前の意見聴取」における税理士の意見を、実地調査の要否の判断において活用するという方針で運用されているのですが、このことは、従来は、もっぱら税務官公署内部で行われていた実地調査対象の選定に関して、専門家たる税理士の意見が尊重されることになったことを意味します。

●「事前通知前の意見聴取制度」の法的位置付け
 日税連及び国税庁は、平成13年の法改正にあたって、書面添付制度の拡充に関連して、「法第33条の2に規定する書面添付のある申告書を提出した納税義務者で、同書面に係る税理士を税務代理に選任している者に事前通知するときは、あらかじめ書面を添付した税理士に『当該申告書に関し』意見を述べる機会を原則として与えることとする。」という改正要望を掲げていました。
 政府は、この要望に基づいて、関係省庁との協議、与党の法案審査及び内閣法制局の審査等を経た上で、平成13年3月9日に「税理士法の一部を改正する法律案要綱」を閣議決定したのですが、この項目については、「添付書面の添付のある申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し税務代理の権限を有することを証する書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該税理士に対し、『当該添付書面の記載事項に関し』意見を述べる機会を与えなければならないこととする。(第35条関係)」と記述していました。
 
 このように、平成13年の法改正案の立案過程において、日税連及び国税庁は、当初、「当該申告書」の記載内容を「事前通知前の意見聴取」の対象と考えていたようですが、最終的な法律案策定の段階で、事前通知前の意見聴取の内容は、それまで「当該申告書に関し・・・」となっていたところが「当該添付書面の記載事項に関し・・・」と変更されたわけです。
 これにより、「事前通知前の意見聴取」は、税理士の作成した「添付書面」の記載内容について行われるものであることが明確になり、個別税法に基づく質問検査権の行使ではなく、税理士法に基づく税理士の固有権として専門家である税理士に意見を述べる機会を保証するものであるという法的な意義が確定したのです。
 このことは、改正法案の国会審議においても繰り返し確認されています。

●「事前通知前の意見聴取制度」の運用方針について
 このような経緯を踏まえ、国税庁は、改正法施行に際して、平成14年3月14日付で発遣した「事務運営指針」において、「意見聴取の内容」を次のように定めていました。

 「意見聴取は、税務の専門家としての立場を尊重して付与された税理士等の権利の一つと位置付けられ、各税法に規定する質問検査権の行使には当たらないとされていることから、書面の記載事項に関する税理士からの意見陳述(以下「一般的な意見の聴取」という))にとどめる。したがって、意見聴取に当たっては、質問検査権の行使と解される具体的な非違事項の指摘や書面に記載のない事項に関する質問は行わないことに留意する。なお、具体的な非違事項の指摘に至らない範囲での書面に記載された事項に係る質問は質問検査権の行使には当たらず、一般的な意見の聴取に含まれる。」
 
 しかし、国税庁は、新制度運用開始から僅か10ヶ月後である平成15年1月17日付で、「事務運営指針」を次のように改正したのです。

 「意見聴取は、税務の専門家としての立場を尊重して付与された税理士等の権利の一つとして位置付けられ、書面を添付した税理士が申告に当たって計算等を行った事項に関することや、実際の意見聴取に当たって生じた疑問点を解明することを目的として行われるものである。したがって、こうした制度の趣旨・目的を踏まえつつ、例えば顕著な増減事項・増減理由や会計処理方法に変更があった事項・変更の理由などについて個別・具体的に質疑を行うなど、意見聴取の機会の積極的な活用に努める。ただし、個別・具体的な非違事項の指摘に至った場合には、加算税の問題が生じうることに留意する。」 

 この改正について、国税庁は、「新書面添付制度を適正に運用し、税務執行の一層の円滑化・簡素化を図っていくためには、意見聴取の機会を積極的に活用していくことにより、本制度を育成していく必要があることから、所要の整備を図るものである。」(平成15年1月17日付事務運営指針「趣旨」)と説明しています。
 しかし一方で、「改正税理士法の施行に併せ、上記事務運営指針がすでに制定されていたが、改正前指針の『意見聴取の内容』の規定では、一般的な意見聴取にとどめ、質問検査権の行使となるような具体的な非違事項の指摘や、書面に記載のない事項への質問はしないこと、とされていた。その書きぶりから、意見聴取の現場では、税理士・調査担当職員の双方で、積極的な質疑応答が避けられる傾向もあったようだ。」(税務通信2760号)との見方もあり、一般的な意見聴取にとどめるということを強調し過ぎたために、実務上「事前通知前の意見聴取」が充分に活用されていなかった状況を是正する意図があったことが窺えるのです。

 すなわち、改正前の「一般的な意見聴取」という表現は、「事前通知前の意見聴取」は、あくまでも税理士法の規定による税理士に対する意見聴取であって、個別税法の規定による質問検査権行使ではないことを確認する趣旨で設けられていたのですが、10ヶ月間運用したところ、このような取扱いでは、意見聴取制度を拡充した立法趣旨に適わないことが明らかになったため、事務運営指針を改正して軌道修正したものとみることができるのです。

 しかし、この改正により、「事前通知前の意見聴取」の法的意義は極めて曖昧なものとなってしまいました。

●法改正の方向性
 以上考察したとおり、「新書面添付制度」は、税務の専門家である税理士の立場をより尊重し、税務行政の一層の円滑化・簡素化を図るために設けられたものであるとされているのですが、その法的位置付けが曖昧なままに運用されているため、税理士の側からは制度のメリットを実感できないこととなり、そのことが普及・定着を阻害している最大の要因になっているように思います。
 したがって、この制度を目的にそって発展させていくためには、運用方針の変更ではなく、法改正による制度改革を行う必用があると考えます。
 すなわち、新書面添付制度を、実地調査の要否の判断において活用すること等により、税務行政の一層の円滑化・簡素化を図るためには、「事前通知前の意見聴取」には、単に専門家である税理士の意見を尊重するだけではなく、場合によっては、納税者の代理人である税理士に対する質問検査権の行使という法的意義を付与する必用があるのではないかと思うのです。

 もとより、申告納税制度のもとでは、納税者の申告により納税義務を確定することが原則ですが、申告が不相当と認められる場合に限り、税務官公署の調査に基づく課税処分により税額を確定することになっています。
 そこで、税務官公署は、申告書が提出されたときから、その申告書の妥当性について調査(申告書審理や準備調査等の内部事務)を行い、さらに、申告内容に疑義がある場合には実地調査を実施します。
 その場合、その申告書に添付書面が添付されているときは、納税者に対する実地調査の前に税理士に対する意見聴取が行われますが、その意見聴取により疑義が解決したときは、そこで調査は終了(実地調査は省略)することになっています。
 一方、疑義が解決しないときは、実地調査が行われることになりますが、場合によっては、意見聴取の段階で修正申告書を提出することにより調査を終了(実地調査を省略)するという局面があっても良いのではないでしょうか。
 税理士は、納税者の委嘱に基づき代理人として税理士業務を行うのですから、提出した申告書について、税務官公署が疑義を解明するために行う一連の作業に対しても代理権限を行使すべきであって、法35条による意見聴取の場面で質問検査に応じることも正当な税理士業務の一環となり得ると考えるべきです。

 ただし、このような手続きを可能とするためには、次のような法改正を検討する必用があります。

 第1に、法33条の2の添付書面は、税理士独自の判断で添付するという現行制度を改めて、「税理士が、納税者の委嘱に基づいて添付する制度」とすべきです。
 この場合、添付書面には、税理士の署名押印のほか委嘱者の署名押印を要することとすべきです。

 第2に、法35条第1項の意見聴取の対象を、現行の「当該添付書面に記載された事項」に加えて、「当該申告書に記載された事項」に対しても意見聴取が行えるように改めるべきです。

●今後の課題
 税理士制度は、申告納税制度の本旨にそって、納税者の納税義務の適正な実現を図ることをその使命としています。
 一方で、国税庁もまた、納税者の納税義務の適正な実現を図ることを使命として設置された行政機関です。
 したがって、税理士制度と税務行政は、ともに申告納税制度を前提とした対等な立場における補完関係にあると考えるべきです。
 書面添付制度は、申告納税制度を適正に機能させるための重要な手続きである税務調査に関連して、税務行政と税理士制度との補完関係を構築するための制度となり得るのではないでしょうか。
 昨今、規制改革の潮流の中で、税理士の業務独占の是非が論じられています。
 また、構造改革の推進に伴い、税務行政についても効率化が求められており、そのことが税理士制度に対して重大な影響を与え始めています。
 このような時代にあって、税理士制度を維持発展させるためには、新たな書面添付制度を戦略的に構築することが有用であると思います。

 税理士は、委嘱者から税務代理権限を付与されたからには、まずもって適正な申告をしなければならず、税務官公署が、その申告内容に疑義を持ったならば、可能な限り、代理人たる税理士がその解明にあたるべきであり、万が一、非違事項が指摘された場合には、委嘱者と相談した上で、専門家として、修正申告書を提出するかどうかについて判断することになります。
 その判断は、必ずしも、納税者に対する実地調査に立ち会った際に行わなければならないというものではなく、法35条に基づく意見聴取の場面であっても行うことは可能であり、これにより、実地調査に至る前に調査が終結するのであれば、納税者の利便性にも適うことになると考えられるのです。

 本稿が提案する改正案は、税理士の税務代理権限をより一層強化し、もって委嘱者の利便性を向上させることを目的としています。
 ただし、この制度が有効に機能するかどうかは、添付書面の記載が立法趣旨に適っているかどうかにかかっています。
したがって、「記載内容が良好な書面」に関する基準の策定が極めて重要となります。
 この点については、日税連業務対策部における検討結果を参考として、今後、新たな制度のもとで機能するための基準を構築していく必用があると思います。

 いずれにしても、書面添付制度については、昭和31年、昭和55年及び平成13年の法改正時に、賛否両論それぞれの立場から様々な議論が展開された経緯があります。
 また、現在に至って未だにこの制度に対する評価が定まっていないことも事実です。
 したがって、書面添付制度に関する法改正に当たっては、税理士会内における議論を尽くし、さらに、国税庁との充分な協議を行った上で検討を進めていかなければならないと考えます。

(01/06)民主党税制抜本改革案

●税制抜本改革アクションプログラム
 民主党は、昨年12月24日、「次の内閣」閣議において、税制調査会(藤井裕久会長)が取りまとめた「税制抜本改革アクションプログラム」(以下、「アクションプログラム」といいます。)を了承しました。
 (「アクションプログラム」は、Tax-Opinion資料室「税制改正」に掲載してあります。)

 「アクションプログラム」は、2007年12月26日に公表した「民主党税制改革大綱」をベースにしていますが、「納税者の立場で『公平・透明・納得』の改革プロセスを築く」というサブタイトルに示されるように、責任の所在を明確化し政治主導の政策決定を行うこととし、政策決定過程を透明化しつつ、納税者の立場に立った税制論議を行い、既得権益を打破し、公平で国民が信頼し納得する税制を築くという、民主党政権における税制改正プロセスの基本的な考え方を明記しています。
 また、政府税制調査会が、一貫して「公平・中立・簡素」を租税原則としていたのに対し、「アクションプログラム」は、「公平・透明・納得」の三原則を掲げています。

●税制の政策決定プロセスの改革
 「アクションプログラム」は、自民党政権下における税制改正プロセスの問題点として、次の4点を指摘しています。
①与党税制調査会・政府税制調査会・経済財政諮問会議がバラバラの議論を行っている
②与党税制調査会の政策決定過程は極めて不透明で、既得権益の温床となっている
③政府税制調査会の答申は利害調整の妥協の産物であり、与党税制調査会におもんばかっている
④歳入歳出ともに制することも量ることもできず迷走している

 これらを改革するため次のような基本的な考え方を示しています。
①公平・透明・納得の改革プロセスを築く
②責任の所在を明確にし、政治主導の政策決定を行う
③政策決定の過程を透明化する
④「入るを量りて出ずるを制す」の考え方に立ち、歳入予算に対応した歳出予算を定めることを基本とする
⑤減税を行う場合はそれに見合った歳出削減・減税措置見直しを行うことを原則とする
⑥国は国税中心に制度設計を行い、地方税は地方が独自に制度設計ができる仕組みとする

 具体的には次のような改革プランを提言しています。
①与党税制調査会は廃止し、政治家をメンバーとして設置する政府税制調査会が税制改正作業及び決定を行う
②各省庁に税制政務官を配置し、税制改正に関する意見集約を行う
③地方税については地方6団体(全国知事会・全国市長会・全国町村会・全国都道府県議会議長会・全国市議会議長会・全国町村議会議長会)・総務大臣・新たな政府税制調査会が対等な立場で協議を行う
④従来の政府税制調査会は廃止し、中長期的な視点から税制のあり方に関し助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置く。
⑤税制改正に関する政府部内の意見集約を毎年秋までに行う。
⑥意見集約の過程は公開を原則とする。
⑦衆参両院に常任委員会として「歳入委員会」を新設する。
⑧政府は、衆参両院の次年度税制改正の論議に基づいて予算編成を行う。

●各税目における改革指針
【所得税】
*格差是正のための所得再分配機能回復策としては、最高税率引上げによる累進性強化ではなく、所得控除から手当・税額控除に転換することの方が実効性が高い。
*さらに進めて「給付付き税額控除」を導入する。
*給与所得控除に一定の上限額を設ける。
*特定支出控除の対象を大幅に広げる。
*全ての所得に対する「総合課税」が望ましいと考えるが、当分の間、金融所得は分離課税とした上で損益通算の範囲を拡大する。

【相続税】
*富の一部を社会に還元する観点から「遺産課税方式」に転換する。
*課税ベース・税率の見直しにあたっては、中堅資産家層の育成に配慮しつつ、格差が固定化しない社会の構築に配慮すべき。 
*相続税の課税方式の見直しに合わせて、生前贈与による有効活用の視点から、贈与税のあり方を見直す。

法人税】
*租税特別措置の抜本的な見直しにより課税ベースが拡大した際には、企業の国際競争力の維持向上を勘案して法人税率を見直す。
*中小企業の活性化や競争力の向上及び起業に対する支援を行う。

【租税特別措置】
*租税特別措置の新設・継続に当たっては、補助金同様、対象者が明確であること、効果や必要性が明白であることなど、透明性の確保を通じて、納税者の納得が得られるように整理・合理化を進める。

【消費税】
*消費税の使途を明確にし、社会保障(年金・医療・介護等)以外に充てないことを法律上も会計上も明確にする。
*インボイスの導入などにより制度の透明性を高める。
*逆進性対策として「給付付き消費税額控除」の導入を図る。
*消費税率の引上げは、税金のムダづかいを徹底的に根絶した上で、社会保障目的税化や社会保障制度の抜本的な改革の具体的内容を示した上で検討する。(仮に引上げが必用となる場合には、総選挙で国民の審判を受けて具体化する。)

【個別間接税】
*特定の政策目的のない個別間接税は早急に整理する。
*「グッド減税・バッド課税」の考え方に立って、課税のあり方を検討する。
自動車重量税及び自動車税を地方税としての保有税に一本化し、一般財源とする。
*ガソリン等の燃料に対する課税は、一般財源の「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化し、排出権取引制度と一体的な制度設計を行う。
*酒税・たばこ税は、国民の健康確保を目的とする税に改める。

【地方財源】
*国と地方の役割分担に見合った税財源の配分のあり方を見直す。
*個別補助金は基本的に全廃し、地方が自由に使える財源として一括交付する。
*一括交付分と地方交付税の一本化など、新たな財政調整制度の創設を検討する。 

●執行体制の改革指針
【社会保障番号制度】
*所得把握体制の環境整備が必要不可欠であるとの観点から、社会保障給付と納税の双方に利用できる番号制度(政府が現在検討している社会保障番号を含む)の早急な導入を進める。

【歳入庁の設置】
*社会保険庁を廃止し、その機能を国税庁に統合して「歳入庁」とする。

【納税者の権利】
*所得税は確定申告を原則とし、給与所得者の年末調整は選択制にする。
*納税者権利憲章を制定する。
*更正の請求の期間制限を早急に見直す。
*国税不服審判所の機能を果たすため、審判官の人事、審判のあり方や手続きについて、納税者の権利を十分に確保することを基本に見直す。

●平成21年度税制改正について
 「アクションプログラム」は、上記の通り、民主党が政権を取った場合の税制抜本改革の方向性を明らかにしました。
 あわせて、平成21年度税制改正について、国民生活を守り、わが国経済の基盤である中小企業の経営支援の観点から、次のとおり政策を示しています。

【租税特別措置の見直し】
*「租税特別措置透明化法」の制定を通じて、抜本的な見直しを進める。
*平成21年度改正においては、①費用対効果、②実施期間、③支援措置の重複等を勘案して、可能な限り意義・効果を検証した上で、個別の案件ごとに判断していく。

【内需主導型経済への転換】
*道路特定財源の暫定税率を廃止し、減税する。
*公的年金控除・老年者控除を平成16年度改正以前の状態に戻す。
*年金受給者の納税手続きを簡素化する。
*証券税制については、一体課税の環境が整備できるまでの間、現行の優遇税制を延長する。
住宅ローン減税については、社会ニーズの高い分野に対して重点的な負担軽減策を講じるとともに、自己資金で住宅を取得した場合にも同程度の負担軽減が受けられる制度を創設する。
*新しい保険料控除を創設し、所得控除限度額を15万円程度に引上げる。

【中小企業支援】
*中小企業に係る軽減税率を、現行の22%から11%に引下げる。
*特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置は廃止する。
*繰戻還付制度の凍結を解除する。
*交際費の損金算入限度額について、現行の90%の上限規制を撤廃し、400万円以下の部分については全額損金算入を可能とする。
*中小企業の事業承継に係る税制について、株式についても事業用宅地並の軽減措置を適用する。
*海外子会社からの受取配当を非課税とする。

【市民が公益を担う社会の実現】
*所得税の寄付優遇税制に税額控除を創設する。
*NPO税制について、パブリック・サポート・テストなどの認定要件を大幅に緩和するとともに事務手続きは簡素化する。

【徴税の適正化】
*徴税の適正化を図るため、罰則の強化及び重加算税割合の引上げを行う。
*消費税の還付に係る調査機能を強化する。
*企業活動の円滑化を図るため、移転価格税制における関係各国との調整体制を整備する。

●国会は税制抜本改革について徹底審議すべきだ
 このように、民主党の「アクションプログラム」は、税制抜本改革の方向性をドラスティックに示しました。
 とりわけ、税制の政策決定プロセスの改革を盛り込んだことは大いに意義があると思います。
 少子高齢化が急速に進むとともに、国際的な経済秩序が大幅に変革していく時代にあって、税制改正法案の立案・立法プロセスを抜本的に改革することは喫緊の課題です。
 与野党は、この問題を政争の具にすることなく、ポジティブな発想で議論をすべきです。
 政府与党は、「中期プログラム」において、税制抜本改革の道筋及び基本的方向性を平成21年度税制改正法案の附則において明かにすることとしています。
 一方の民主党は、解散・総選挙を最大の目標とし、政権交代の後に「アクションプログラム」を実現しようとしています。
 このような状況では、国会で税制抜本改革に関する議論を行うことは難しくなってしまいます。
 この際、中長期的な改革に関する議論は、平成21年度税制改正法案とは切り離し、特別のステージを設けた上で、徹底審議をすべきだと思いますがいかがでしょうか。

(12/30)中期プログラム

●閣議決定 
 政府は、本年12月24日、経済財政諮問会議における検討を踏まえて、「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」(以下「中期プログラム」といいます。)を閣議決定しました。
 (「中期プログラム」は、Tax-Opinion資料室「税制改正」に掲載しました。)

 政府は、既に、与党が決定した2009年度税制改正大綱に基づく税制改正法の成立を前提として、来年度予算案を閣議決定していますが、当面は、景気回復を優先することとしています。
 そのため、消費税率の引上げを含む税制抜本改革は景気が回復した後に着手することとしており、2009年度及び2010年度の財源不足については、特別会計の積立金(いわゆる埋蔵金)を充てることを明確にしています。
 しかし、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げのほか、社会保障給付の増加に伴う財源確保のため、税制抜本改革が喫緊の課題であることは間違いないのですから、その方向性を示すことは、政府としての当然の責務だったわけです。
 11月28日に公表された政府税調答申も、2009年度については景気対策優先を容認するとしながらも、税制抜本改革の実施時期を「中期プログラム」において明らかにすることを求めていました。
 すなわち、「中期プログラム」は、政府与党が税制抜本改革の道筋及び基本的方向性を示すという極めて重要な意味を持っているのです。
 今般、閣議決定に至る過程で、政府と与党(自民党・公明党)の間で、消費税率引上げの時期を記載するかどうかについて調整が難航した模様が報道されましたが、結局、麻生首相の強い意向により、「2011年度(3年後)より実施」が明記されました。

●税制抜本改革の道筋
 「中期プログラム」は、「今年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提に、消費税を含む税制抜本改革を2011年度より実施できるよう、必要な法制上の措置をあらかじめ講じ、2010年代半ばまでに段階的に行って持続可能な財政構造を確立する。」と記述しています。
 すなわち、3年後の消費税増税は景気回復が前提であるという表現により増税時期を曖昧にし、時期を明記することに反対していたグループに対する配慮をしているわけです。
 そのため、景気回復したかどうかという評価如何によって消費税率の引上げ時期が左右されるという、いわば玉虫色の道筋になってしまいました。
 しかし、記述された文章を素直に読めば、2010年度税制改正法によって、消費税の税率引上げを中心とする税制抜本改革のための立法措置を行うことになります。
 なお、「中期プログラム」は、「消費税収が充てられる社会保障の費用は、その他の予算とは厳密に区分経理し、予算・決算において消費税収と社会保障費用の対応関係を明示する。」と記述して、従来に増して消費税の社会保障目的税化を強調しています。

●税制抜本改革の基本的方向性
 「中期プログラム」は、税制抜本改革の基本的方向性について次のように記述しています。

 【個人所得税】
 *格差是正・所得再分配機能の回復の観点から、各種控除や税率構造を見直す
 *最高税率の引上げ・給与所得控除の上限調整(高所得者の税負担増)
 *給付付き税額控除の導入(中低所得世帯の負担軽減)
 *金融課税の一体化の推進

 【法人課税】
 *国際的整合性の確保・国際競争力の強化の観点から、課税ベースの拡大とともに法人実効税率を引下げる

 【消費課税】
 *消費税の全額を社会保障給付(年金・医療介護)及び少子化対策に充てることを予算・決算で明確化する
 *消費税の税率を検討する
 *複数税率の検討等総合的な取組により低所得者に配慮する

 【自動車諸税】
 *税制の簡素化を図る
 *税制の在り方及び税率(暫定税率を含む)の在り方を総合的に見直す(負担軽減)

 【資産課税】
 *格差の固定化防止・老後扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース・税率構造等を見直 す(負担の適正化)

 【納税環境】
 *納税者番号制度の導入を準備する

 【地方税制】
 *地方消費税の充実を検討する
 *地方法人課税の在り方を見直す(税源の偏在性の縮小・安定的な税収体系)

 【グリーン化】
 *低炭素化推進の観点から税制全体のグリーン化を推進する

●税制抜本改革の方向性は国会で徹底審議すべきだ
 年明け早々に招集される通常国会では、冒頭から、第2次補正予算及びその関連法案の審議を通じて与野党が激突することが予想されます。
 とりわけ、麻生内閣の政策の目玉とされる「定額給付金」の是非が争点になると考えられます。
 たしかに、100年に1度といわれる深刻な経済状況にあって、緊急に行わなければならない政策を実施するための立法は重要だと思います。
 しかし、一方で、国会は、我が国の租税制度をどのように構築していくべきかという基本的な議論をしなければならないのではないでしょうか?
 「中期プログラム」も示しているように、税制抜本改革のテーマは、単に消費税の税率アップだけではなく税制全般に及んでいます。
 大きな争点とされる「定額給付金」にしても、1回限りのバラマキ的な発想ではなく、給付付き税額控除との関連で税制抜本改革とリンクした議論をすべきです。
 2008年度税制改正法案の審議にあたっては、道路特定財源の暫定税率の是非1点に矮小化されてしまい、重要な課題がほとんど議論されなかったのですが、租税法律主義のを護るという立法府の責務からみて極めて残念だったと思います。
 経済財政諮問会議では、税制改革の手法などを定める「プログラム法案」を国会に提出することを検討していたようですが、「中期プログラム」は、結局、「2009年度(平成21年度)の税制改正に関する法律の附則において、税制抜本改革の道筋及び基本的方向性を立法上明らかにする。」という記述に留まってしまいました。
 税制改正法案の附則では、国会における実質審議は期待出来ませんので、何らかのステージを設けて、与野党で徹底的に税制抜本改革に関する議論をしていただきたいと思います。

(12/24)規制改革会議

●規制改革推進のための第3次答申 
 本年12月22日、規制改革会議(草刈隆郎会長)は、「規制改革推進のための第3次答申-規制の集中改革プログラム-」(以下、「第3次答申」といいます。)を公表しました。
 (第3次答申のうち税理士制度に関連のある部分をTax-Opinion資料室「規制改革」に掲載しました。)

 政府は、この第3次答申を受けて、12月26日に「規制改革会議の第3次答申」を最大限尊重する旨の閣議決定を行います。
 第3次答申は、①社会保障・少子化対策、②農林水産業・地域、③生活基盤、④国際競争力向上、⑤社会基盤、⑥教育・資格改革、⑦官業スリム化の7分野について、政策提言を行っています。
 第3次答申の内容については、各省庁における検討の進捗状況や法案提出の準備状況を踏まえ、自由民主党の各部会における審査を経て、来年3月下旬に「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」が閣議決定され、この決定事項に従って各省庁が関連法案の整備を行うことになります。

●資格制度全般の問題意識
 第3次答申は、資格制度全般に対して、「時代の要請に応じた専門的かつ総合的なサービスを国民に提供するため、従来からの資格者個人を中心とする業務形態からの転換も視野にいれた制度の見直しが必用である。」との問題意識を示しています。
 特に業務独占資格については、「業務の独占」「合格者の事実上の制限」「受験資格要件」等の規制による新規参入抑制、及び、市場における競争が制限される環境等により、競争を通じて本来国民が享受できる良質で多様なサービスの供給が阻害されるおそれがあると指摘しています。
 このため、独占業務の範囲を可能な限り限定するとともに、資格者の垣根を低くすることにより各種業務分野における競争の活性化を図る必要があるとしています。
 このような認識の下、各資格制度の所管官庁は、所管する資格制度が健全に発展するように常に資格者団体や資格者の支援を行う一方、単に現行制度の維持や資格者の既得権益の保護に腐心するような弊害を排し、実際にサービスの向上が図られるよう資格制度の見直しを推進するべきであると記述しています。

●資格者法人の設立要件緩和
 このテーマは、規制改革会議が7月の中間とりまとめにおいて問題提起した論点です。
 第3次答申も、基本的には中間とりまとめの主張を踏襲しており、資格者法人の数を増加させる観点から、「資格者法人の設立要件の緩和を行い、個人事務所を中心とする業務形態だけではなく、事務所の法人化や大規模化も容易に選択できるようにする中で、資格者が提供するサービスの専門化・高度化、ワンストップサービス化など、ビジネスモデルの近代化により国民の利便性を向上させていく必要があると考えられる。」と記述しています。
 具体的には、①資格者法人の一人法人制度の創設、②資格者法人社員の無限連帯責任の見直し、③資格者法人の社員資格の拡大を求めています。

 【一人法人制度】
 第3次答申は、「資格者法人制度(弁護士法人制度を除く)は、複数の社員が共同して、業務を分業し、専門化することで利用者に対する質の高い多様なサービスの提供を可能とすること、担当者が疾病や事故により業務を行うことが困難になった状況などにおいて、他の社員が代わって業務を行うことで安定的なサービスの提供できるようにすることを主たる目的」と整理し、二人以上の社員で設立することが制度導入の趣旨にかなうとしています。
 また、一人法人の場合、①資格者の死亡時や廃業時における顧客への継続的な対応に問題が生じること、②専門化・高度化する顧客ニーズに対応できないこと、③賠償責任能力の強化につながらない等のデメリットも指摘しています。
 一方で、①事務所の資産と資格者個人の資産との分離が図られ、廃業する場合に業務の引継が容易になること、②将来的に複数社員法人や合併による大規模化促進が可能となること、③法人化により信用力が増し資金調達が容易になる等のメリットを示しています。
 このように、両論併記をした上で、士業団体として一人法人制度の導入を要望した「司法書士」「土地家屋調査士」「行政書士」「社会保険労務士」の4士業について一人法人制度を創設すべきであるとする結論を明記しました。

 【無限連帯責任の見直し】
 第3次答申は、社員全員に無限連帯責任が課されていることが資格者事務所の法人化・大規模化が進まない原因であるとして、「これは、業務が専門化、複雑化する中で、資格者法人の大規模化や業務の総合化を進めようとしても、社員の無限連帯責任制度の下では、自ら直接関与せず認識もない他の社員に起因する業務上の責任を連帯して負わされることへの懸念から生ずるものと考えられる。」と指摘しています。
 そして、弁護士法人・特許業務法人・監査法人が指定社員無限連帯責任制度を導入していることを示して、他の資格者法人について無限連帯責任制の見直しを促しています。
 一方で、有限責任を認めた場合には、賠償責任能力の強化につながらないため、資格者法人制度設立の趣旨に反するうえ、顧客保護の観点から問題があるとの指摘もしています。
 この論点についても、士業団体として無限連帯責任制度の見直しを要望した「司法書士」「行政書士」「社会保険労務士」の3士業について有限責任制の導入を図るとする結論を明記しました。

 【社員資格の拡大】
 第3次答申は、「資格者法人の社員資格を資格者以外に拡大することにより、資格者法人への出資の可能性を拡げ経営基盤の拡充を図ることが可能になるととともに、各資格者法人が大規模化を図ったり、他士業の資格者と共同で多様なサービスを総合的に提供するワンストップ業務等を展開する場合も想定される。」と記述し、国民の良質で多様なサービスを提供する観点から有意義であるとしています。
 一方で、①資格者の死亡時や廃業時における顧客への継続的な対応に問題が生じること、②専門化・高度化する総合的な顧客ニーズに対応できないこと、③無資格者による違法な業務が行われる等のデメリットも示しています。
 この論点については、制度改革を要望した士業団体がなかったためか、「メリットとデメリットの双方を十分に勘案しつつ検討を進め、可能な限り早期に結論を得るべきである。」という表現にとどまっています。

●日税連の対応について
 資格者法人の設立要件の緩和については、「規制改革推進のための3か年計画(改定)」(本年3月25日閣議決定)、及び、本年7月に規制改革会議が公表した「中間とりまとめ」を受けて、日税連の規制改革対策特別委員会において検討を進めてきました。
 また、現在、制度部が行っている「税理士法改正要望項目(タタキ台)」の再検討の中にもこれらの項目が含まれています。
 (税理士法人の設立要件に関する論点については、10月24日のブログをご参照下さい。)

 今般の第3次答申は、税理士法人制度について直接言及していないため、当面、この論点は終息することになるのではないかと思います。

●業務範囲の見直しについて
 第3次答申は、「法務・資格分野」について、上記論点のほか、次の点を記述しています。
 *業務範囲の見直し
 *ADR法の「弁護士の助言制度」の適正な解釈・運用の周知徹底
 *法曹人口の拡大等
 *民法(債権法)の改正について
 *会社法制の継続的見直しについて
 *その他

 この内、「業務範囲の見直し」については、「資格者間の垣根を低くすることにより各種業務分野における競争の活性化を図り、利用者である国民の多様なレベルの業務サービスの選択が可能となるように業務範囲の見直しに取り組むべきである。」という問題意識を示しています。
 その上で、具体的には、①社会保険労務士への簡易裁判所訴訟代理権等の付与、②司法書士・行政書士への行政不服審査の代理権の付与が記載されました。
 この論点についても、税理士制度に関して直接的な言及はありません。

 ここ数年、規制改革会議では、「資格者間の垣根を低くする」ための具体的な施策を提言するため、業界団体に対して、他資格者の独占業務の開放要望を誘導するような議論が行われているようですが、このような議論は、資格制度の本来のあり方からみて正しくないように思います。

 業務独占資格は、国民の権利・自由と安全・安心の確保、取引の適正化等を図るため、厳格な法的規律に拠り設けられているのですが、国民に対して一定の質が確保されたサービスの提供を行うことが大前提でなければならず、その信頼性は、各資格におけるそれぞれの専門性によって担保されています。
 したがって、国民の利便性向上のために資格者間の垣根を低くするとしても、専門性を確保するための能力担保措置が絶対条件になります。
 この観点に立ったならば、当面、税理士の側から他士業の独占業務の開放を求める項目はないと考えるべきだと思います。


(12/14)2009年度税制改正

●二つの税制調査会
 周知のとおり、我が国には税制改正に影響力を持つ二つの税制調査会があります。
 一つは内閣総理大臣の諮問機関として設置されている「税制調査会」(以下「政府税調」といいます。)であり、もう一つは自由民主党の政務調査会長のもとに設けられている「税制調査会」(以下「自民党税調」といいます)です。
 「政府税調」(香西泰会長)は、内閣府本府組織令第38条の規定に基づく審議会であり、①内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議すること、②前号に掲げる諮問に関連する事項に関し内閣総理大臣に意見を述べることをその任務としています(同第40条)。
 すなわち、政府税調は、内閣が国会に提出する税制改正法案を策定するに当たって、重要な影響力を持っているわけです。
 一方の「自民党税調」(津島雄二会長)は、自民党の税制政策立案を担う組織で、各省庁及び各業界団体等から寄せられる膨大な税制改正要望の取捨選択等の作業や、自民党各部会との折衝を通じて、政権与党としての政策決定に大きな影響力を持っています。

 「政府税調」は、本年11月28日に「平成21年度の税制改正に関する答申」を取りまとめて麻生総理に手交しました。
 また、自民党は、12月12日に、「自民党税調」における検討を受けて、政務調査会及び総務会の決定等の党内手続きを経て、「平成21年度税制改正大綱」を党議決定しました。
 この大綱は、公明党との協議を経ていますので、そのまま「与党税制改正大綱」となり、この方針に沿って、政府の税制改正法案が策定されることになります。

 (「政府税調答申」及び「自民党税制改正大綱」は、Tax-Opinion資料室「税制改正」に掲載してあります。)

●政府税調答申
 本年の「政府税調」は、7月22日の企画会合において半年ぶりに議論を再開したものの、その後4ヶ月間は休眠状態が続き、11月28日に答申を決定する総会を開催するまでの間実質審議は僅か3回(11月14日・18日・21日)しか行っていません。
 因みに、抜本的税制改革が課題となっていた平成15年の場合、当時の「政府税調」(石弘光会長)は、1月17日に小泉総理を迎えて総会を開催し、新年早々から平成16年度税制改正について議論を開始してから、12月15日に答申を取りまとめるまでに、総会だけでも15回開催していました。
 本年の政府税調答申の本文は僅か8頁であり、昨年答申(32頁)の4分の1でしかありませんでした。
 内容も、昨年答申が、「抜本的な税制改革に向けた基本的な考え方」というサブタイトルを付して、「消費税は社会保障財源の中核」と位置づけた上で早期の消費税率引上げを求める等、税制の基本構造について提言をしていたのとは対照的に、本年答申は、所得税・法人税・消費税等の基幹税の改革については全く言及していません。
 本年答申は、景気対策の優先を容認し、抜本的税制改正については、政府が年末までに策定する「中期プログラム」に任せることとしています。

 各論として示されているのは次の3項目です。
 【相続税】
 昨年答申が、「相続税の資産再分配機能の回復が重要」として課税ベースの拡大を求めたほか、事業承継円滑化のための納税猶予制度の創設に伴い「遺産取得課税方式」への移行を明記したのに対し、本年答申は、「現行方式については、相続税の総額が遺産総額と法定相続人数等により一義的に定まり、遺産分割のされ方に対して中立的であることなどから、肯定的に評価する意見もあった。」と記述して、「幅広い国民の合意を得ながら議論を進める必用がある。」という表現で改革を先送りしています。

 【国際課税】
 「間接外国税額控除制度に代えて、外国子会社からの配当について親会社の益金不算入とする制度を導入することが適当である。」としています。

 【固定資産税】
 固定資産税は、地方税としてふさわしい基幹税目であるとの観点から、「今後とも安定的な確保が重要である。」と記述しています。

 いずれも、あるべき税制の形を議論した結論としては物足りないものばかりです。
 政府税調の任務は、首相の諮問機関として租税制度に関する基本的事項を調査審議することです。
 すなわち、「公平・簡素・中立」という租税原則に則した税制のあり方について見識を示すことが期待されているのだと思います。
 たしかに、税制改正にあたっては、様々な立場の利害調整が必用となり、政治判断に委ねなければならない場面も多いのだとは思いますが、少なくとも政府税調としては基本的な議論を避けてはならないのではないでしょうか?
 本年答申に対しては、「物言わぬ政府税調ならいらない」(12月1日。毎日社説)等、概ね厳しい評価となっているようです。

●自民党税制改正大綱
 12月12日に、自民党が公表した「平成21年度税制改正大綱」は、大規模な住宅ローン減税、ハイブリッド車等に対する自動車減税、今後2年間に購入した土地の非課税枠の創設、中小法人の軽減税率の引下げ等、数多くの減税策が盛り込まれています。
 一方で、麻生総理が言明していた3年後の消費税率引上げについては、「現下の厳しい経済金融情勢にかえりみれば今はそのタイミングにはない。」として、「経済状況の好転後、速やかに税制抜本改革を実施する必用がある。」と記述しています。

 大綱は、「税制抜本的改革の道筋」」として、①格差是正や所得再分配機能回復の観点からの個人所得課税の見直し、②国際的整合性の確保及び国際競争力の観点からの法人実効税率の引下げ、③社会福祉給付に充てるための消費税の税率の検討(あわせて複数税率等の検討)、④自動車関係諸税の暫定税率の見直し、⑤相続税の課税ベースや税率構造の見直し、⑥納税者番号制度の導入、⑦安定的な地方税体系の構築、⑧税制全体のグリーン化等をメニューとして示しています。
 しかし、これらの税制抜本的改革は、経済状況が好転するまで先送りすることとし、当面は、大規模な減税による景気刺激策を行うという政策判断をしたのです。

 自民党税制改正大綱に対する各紙の評価は次のとおりです。
 【読売】(12月13日社説)
 「減税だけで不安は消えぬ」というタイトルを掲げ、「内需波及効果が大きい住宅や自動車などの需要を刺激する狙いは分かる」としながらも、「もう一つの焦点だった消費税率の引き上げは、あまりに及び腰と言わざるを得ない」と指摘し、消費税の引上げ時期と引上げ幅を明記しなかったことを批判しています。
 麻生首相が明言していた消費税の3年後の引上げが、選挙への影響を懸念した公明党の反発により明示できなかったことに加え、たばこ税の引き上げの見送りもあり、「(首相の)指導力の低下は目を覆わんばかりだ。」と述べています。

 【日経】(12月13日社説)
 タイトルを「景気も改革も力不足の与党税制大綱」として、「景気悪化に一定の配慮はしたものの、一貫性のない政策減税の寄せ集めでは経済の浮揚には力不足である。中期の課題である消費税や法人税の抜本改革も踏み込めず、麻生政権の求心力低下を映した。」と指摘しています。
 また、「金融課税一体化」導入の先送り、「法人実効税率引下げ」の先延ばし、及び、「たばこ税」の増税見送りについて懸念を示しています。

 【朝日】(12月13日社説)
 「景気対策と税-ただの放漫財政では困る」というタイトルを付けて、首相の求心力が衰えている中で、「どこまで財政規律の筋を通すことができるのだろうか」という疑問を示し、「選挙への思惑を絡めてあれもこれもと盛り込めば、それこそ放漫財政そのものではないか」と指摘し、「漫然と財政赤字を膨らませるだけなら、国民はとても安心できまい。」と結んでいます。

●党高政低
 二つの税制調査会は、100年に一度といわれる経済危機に直面する中で、来年の税制改正について、それぞれの結論を出しました。
 「政府税調」は、答申の冒頭で、「少子高齢化やグローバル化といった経済社会の構造変化の中で、抜本的な税制改革は焦眉の課題である。」と記述しながらも、「今般の経済情勢を踏まえれば、当面、景気対策を優先することは、国民生活と我が国経済の安定を守るためにやむを得ないものと考える。」として、抜本的税制改革に関する議論を先送りしてしまいました。
 一方の、「自民党税調」は、「このような経済金融情勢に即応し、世界経済の混乱やそれに伴う国内経済の不振から国民生活を守り、今年度から3年間のうちに景気回復を最優先で実現するとの断固たる決意に基づいて、わが国の内需を刺激するため、大胆かつ柔軟な減税措置を講じる。」こととしたわけです。

 両者を比較した場合、本年は、党高政低が顕著になったように思います。
 すなわち、官邸を中心とする政府の意向を、自民党がことごとくダメ出ししたという構図が見て取れます。
 「税は政治の基本」といわれますが、一方で、租税原則に適合した税制の構築を目指すことも重要なのではないでしょうか。

(11/25)国際連帯税

●「国際連帯税」東京シンポジウム2008
 11月23日、東京税理士会館において、「国際連帯税」東京シンポジウム2008が開催されました。
 このシンポジウムは、寺島実郎日本総合研究所所長、金子宏東京大学名誉教授、三木義一立命館大学法科大学院教授及び松嶋康尚東京青年税理士連盟会長のほか、多くの研究者や市民団体等が呼びかけ人となり実現したものです。
 (シンポジウムのチラシはTax-Opinion資料室「TOPICS」をご参照下さい。)

 シンポジウムでは、三木義一教授の開会挨拶に続き、寺島実郎氏の「金融資本主義の崩壊と国際連帯税」と題する基調講演が行われました。
 その後、上村雄彦千葉大学地球福祉研究センター准教授より、前日に行われた専門家会合報告がありました。
 次に、「国際連帯税創設を求める議員連盟」幹事長の林芳正参議院議員(自民党)の挨拶がありました。この議員連盟は、津島雄二衆議院議員(自民党税制調査会会長)が会長を務める超党派の議員約40名による組織です。
 その後、上村准教授のコーディネートによるパネルディスカッションが行われました。
 パネラーは次の通りですが、それぞれの立場から国際連帯税の必要性について熱心な主張が行われました。
  *金子文夫(横浜市立大学国際総合科学部教授)
  *稲葉雅紀(アフリカ日本協議会ディレクター)
  *植田和弘(京都大学経済学部教授)
  *犬塚直史(民主党参議院議員・国際連帯税創設を求める議員連盟事務局長)
  *大江 博(外務省地球規模課題審議官)
  *木村祐二(環境省地球環境局総務課長)

 最後に、田中徹二オルタモンド事務局長による、「国際連帯税推進市民委員会(仮称)」設立に向けてのアピールがありました。

●国際連帯税とは?
 国際連帯税とは、地球温暖化や途上国の貧困・疫病等の地球規模の問題に対する対策資金を創出する仕組みの一つとして提案されている構想で、国境を越えて展開される経済活動に対して課税を行い、その税収を途上国向けの支援に充てようというものです。
 国際連帯税の起源は、1970年代にジェームズ・トービンによって提唱されたトービン税構想にあると言われていますが、2000年9月に開催された国連のミレニアム・サミットにおいて具体的な指標を定めたミレニアム開発目標が定められ、国際社会として目標達成のための資金調達方法について真剣な検討が始められました。
 その後、2002年3月のモンテレー国連開発資金国際会議において、ミレニアム開発目標達成のための革新的資金メカニズムの一環として、国際連帯税の導入が初めて検討されることとになりました。
 現在、この構想から具体的に発展したイニシアティブとして、医療品購入補助機構としてのINITAID(国際医療品購入ファシリティ)、疫病などの予防接種資金調達補助のためのIFFLm(予防接種のための国際金融ファシリティ)の他、フランス等欧州において実施されている「航空券連帯税」等があります。
 また、最近では、世界的な金融危機に対応するためのスキームとして位置付けられるCTDL「通貨取引開発税」等が検討されています。

●地球的視野により「税」を考える必要性
 2006年3月にフランス政府等の提唱による国際連帯税パリ国際会議で創設された「連帯税または革新的資金メカニズム」推進グループには、現在53カ国が参加しています。
 わが国も、このリーディング・グループ総会にオブザーバーとして参加してきましたが、「国際連帯税創設を求める議員連盟」の働きかけにより、本年8月より、日本政府が正式メンバーになりました。
 いずれにしても、様々な問題が国境を越えて進展していく現状にあって、国際社会が協調して対応するスキームが必用であることは間違いありません。
 そのための資金調達の方法についても、各国が徴収した税を拠出するという考え方を越えた革新的な発想が望まれるのだと思います。
 我々税理士も、「税」という問題について、国内問題としてだけではなく国際的な視点で考えていかなければならない時代になったようです。

(11/18)税理士の使命

●「税理士法改正に関する基本要綱」について
 税理士法は、昭和26年に旧税務代理士法を改正する形式により施行されました。
 制定当初の税理士法第1条は次のように定められていました。

 旧税理士法第1条(税理士の職責)
 税理士は、中正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない。

 その後、税理士法は数次にわたり改正されていますが、第1条については、長年にわたって様々な議論が展開されてきました。

 日税連が昭和47年6月に理事会決議をした「税理士法改正に関する基本要綱」は、税理士法第1条に「税理士の使命」を宣言的に規定して、税理士制度の本質を明確にすべきであるという考え方に基づき、次のような法改正意見を記載しています。

【税理士の使命】
 「標題」を税理士の使命とし、つぎのように改める。
 1.税理士は、納税者の権利を擁護し、法律に定められた納税義務の適正な実現をはかることを使命とする。
 2.税理士は、前項の使命にもとづき、誠実にその職務を行ない、納税者の信頼にこたえるとともに、租税制度の改善に努力しなければならない。
(理由)
 現行税理士法は、「中正な立場」という曖昧な表現と、大蔵省・国税庁の税理士会および税理士に対する直接の監督権とがあいまって、税理士制度を、たんに税務行政の補助機関としてとらえているきらいがある。
 近代国家では、国民と国家は平等の法主体者であり、ともに法の支配をうけ、租税を国民の発意ある立法事項とすることにより、権利義務関係、すなわち法律関係としている。
 社会情勢、経済活動の進展は、納税者の代理人として税理士制度を生み出し、税理士をして、納税者の良き代理人としての職業専門家を期待している。
 したがって、税理士は、租税法律主義にもとづき、納税者の権利を擁護し、適正な納税義務の実現を図ることを使命 として明確に規定するとともに、誠実にその職務を行ない、租税正義の実現のために、租税制度の改善に努力すべき ことを明定することは、税理士制度に対する社会的要請に応えるゆえんである。

 以上の通り、税理士が納税者の代理人であることを明確にし、条文中に「納税者の権利を擁護し、」という文言を明記すべきとする有力な意見があったのです。
 一方で、税理士が税という公共的な業務を独占するうえは、納税者の代理人の立場を超えて税務行政の一翼を担う者としての特別の使命を求めようとする考え方もありました。
 このように、税理士法第1条については、二つの対立した意見が存在していたように思います。

●昭和55年法改正の意義
 昭和55年の税理士法改正は、これらの論争に対して一定の結論を与えたものと考えられます。
 改正された条文は次の通りです。

 税理士法第1条(税理士の使命)
 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

 条文見出しを「職責」から「使命」へと改正したことは、旧法が職務上の責任を規定内容としていたところを、改正法は税理士の果たすべき公共的役割を明確に規定したことを意味しています。
 また、第1条の規定が、税理士法の全条文の解釈にあたって拠るべき基本原則として位置付けられているところに大きな意義があります。
 なお、この時の国会審議の過程で、政府原案にはなかった「申告納税制度の理念にそって、」という文言が、議員による修正案として挿入されました。
 もとより、税理士制度は、昭和20年代初頭に、わが国の租税制度が、賦課課税中心から申告納税中心へと変革されたことを受けて、国民の自主申告権を援助する制度として制定されたものです。
 この修正により、税理士制度は、専門化による代理人制度として、納税義務の適正な実現を図るという公共的な使命がより明確になったものと考えられます。
 さらに、平成13年の税理士法改正において、法第2条の2(補佐人制度)が創設されたことにより、税理士制度が、納税者の権利を擁護するための代理人制度であることがより一層鮮明になりました。

●「税理士の使命」の解釈について
 昭和55年の法改正により第1条が改められた後、日税連制度部は、昭和63年5月に、「税理士法第1条に定める使命のあり方について」という公式見解を公表しています。
 (この見解は、Tax-Opinion資料室「税理士制度」に掲載してあります。)

 現在では、税理士法第1条については、この日税連見解にそって、次のような解釈により安定しているように思います。
 「税務に関する専門家として」という文言は、税理士が租税法に関する専門家であることを明らかにしています。したがって専門家である税理士には、租税法に精通し、その解釈、適用についても高度な専門的な識見を有し、税理士業務の遂行にあたっては専門家としての高い資質と責任が求められることになります。
 「独立した」とは、専門家としての独立性を指し、具体的には精神的独立性と経済的独立性が不可欠であることを意味します。
 また、「公正な立場」とは、何人からも指揮命令を受けることなく専門家としての自らの判断により租税法を遵守する立場を指します。
 したがって税理士には、「申告納税制度」の理念にそって「納税義務の適正な実現を図る」ことが求められ、納税者が租税法に従っていない場合にはこれを正し、税務官公署が租税法の解釈や適用を誤っている場合にはこれに対峙し、租税法の遵守を貫かなければならないことになります。
 「納税者の信頼にこたえ」とは、税務官公署が租税法の専門知識を有する公務員によって構成されているのに対し、一般的な納税者が租税法に関する充分な知識と経験を有するものではない状況のもとで、税理士が納税者を援助し税務官公署と対等な立場でその役割を果たすことを求める趣旨です。
 以上のとおり、法1条に定める「税理士の使命」は、納税義務の基礎となる事実の認定、租税法の解釈について、憲法が要請する租税法律主義の原則に基づき、申告納税制度の理念にそった納税義務の適正な実現を果たすために納税者を援助することと解すべきだと思います。

●次期税理士法改正にあたって
 現在、日税連は、次期税理士法改正に向けて、改正項目について検討を進めています。
 会員の中には、次の法改正にあたって、税理士法第1条の改正を行うべきであるという意見が散見されます。
 これらの意見の多くは、先に紹介した昭和47年の「税理士法改正に関する基本要綱」と同様の趣旨のように見受けられます。
 しかし、上述した通り、昭和55年の税理士法改正により、「税理士の使命」は明確にされています。
 したがって、次期税理士法改正にあたっては、敢えて法1条の改正を議論するのではなく、上述した解釈に基づいて他の項目の改正に関する検討を行うべきであると考えます。

(10/31)税理士試験

●規制改革政策と受験資格要件
 「規制改革推進のための3か年計画(改訂)」(平成20年3月25日閣議決定)は、税理士制度について、「税理士試験の受験資格については、受験資格が学歴等で差別されないような仕組みが十分担保されているか否かについて、速やかに検討を行い、結論を得る。」(平成20年検討・結論、21年以降措置)という方針を示しています。
 この方針に従い、財務省は、税理士試験の受験資格要件を定めている税理士法第5条の改廃について検討を行い、来年3月までに結論を出さなければならないことになっています。
 規制改革会議は、上記の閣議決定のベースとなった「規制改革推進のための第2次答申-規制の集中改革プログラム-」(平成19年12月25日公表)を取りまとめる過程で、昨年11月7日に、日税連に対するヒアリングを実施しています。
 日税連は、税理士法第5条(受験資格)の立法趣旨を説明するとともに、現行の受験資格は、学歴要件だけではなく、実務経験や国税審議会の認定(日商簿記1級合格等)によっても与えられることとなっている現状を説明しました。
 一方で、次世代の優秀な人材の税理士業界への参入を促進するため、税理士試験の受験者を増加させるべきであるとの観点から、受験者の減少傾向に対しては、原因を分析した上で、試験制度改革も検討すべきであるとし、新公認会計士試験の動向をみた上で、税理士試験のあり方について総合的に検討しなければならないという意見を述べました。
 すなわち、試験制度改革を進める場合には、単に受験資格要件だけを見直すのではなく、試験方法や試験免除制度等を含む幅広い検討が必要であるという点を主張したのです。
 日税連は、本年7月9日にも、規制改革会議のヒアリングを受けていますが、受験資格要件の再検討については、同様の主張を行っています。

●税理士試験制度改革の視点
 税理士法第6条は、「税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする」と定めています。
 この目的自体は変更する必要ないのですが、試験制度そのものについては、時代の変遷に合わせて大胆な改革を行うべきだと思います。
 税理士試験は、科目別合格制を採用しており、勤務しながら受験を続けることができる制度として、長年にわたり評価されてきました。
 しかし、他方、暗記力と計算のスピードを試すような出題に偏っているという批判もあります。
 また、平成13年改正で補佐人制度が導入されたことに加え、平成18年の会社法施行で会計参与制度が導入される等、近年、税理士の業務範囲は拡大しています。
 さらに、平成18年に公認会計士試験が新方式に移行してから、税理士試験の受験者数が減少する一方で公認会計士試験の受験者数が増加しているという実態も考慮しなければなりません。
 このような時代背景にあって、税理士試験を、税理士となるための資質の検証を行うための合理的な制度として再構築するとともに、より多くの若い世代の方々が受験できるような方法を考えていかなければならないと思います。

●2段階方式の導入について
 以上の視点に立って、「短答式試験」と「論述式試験」の2段階方式の導入を提案したいと思います。
 「短答式試験」では、税理士となるのに必要な全般的な学識を有するかどうかを検証するため、最低必要な水準の会計学、租税手続法及び租税争訟法を含む租税法全般、税理士業務に必要な程度の憲法・民法・会社法・民事訴訟法等、出題範囲を拡大した上で択一式(マークシート)による試験として実施します。
 この試験は、どちらかと言えば、広く浅く、「税理士となるのに必要な学識」を検証するために実施するという位置づけになります。
 この観点から、具体的な出題科目を検討し、必修科目と選択科目をバランス良く配置すべきです。
 なお、短答式試験については、科目別合格制を維持することが望ましいと思います。
 また、短答式試験を導入することにより、税理士試験の受験資格要件は全廃しても良いのではないでしょうか。
 一方、「論述式試験」は、短答式試験に合格した者を対象として、専門的な学識及びその応用能力を有するかどうかを検証するために実施します。
 論述式試験では、単に知識だけではなく、思考力・判断能力・応用能力・論述力等を判定することに主眼を置く出題を行うこととし、条文集の持込を認めるか、または、問題の中に関係条文を示すこととすべきです。
 この論述式試験は、短答式試験により、税理士となるのに必要な幅広い知識についての検証は終えている者を対象とするのですから、「会計学」及び「租税法」の中からそれぞれ1科目を選択して受験させることとすべきです。

資格取得制度との関係について
 税理士法第3条は、①税理士試験合格者、②税理士試験免除者、③弁護士、③公認会計士に対して税理士資格を付与することとしています。
 また、税理士法第7条及び第8条は、税理士試験の科目免除について様々な規定を置いています。
 このような現行制度に対して、様々な観点から改正意見が示されていますが、税理士の資格取得制度に関する論点は、①弁護士に対する資格付与、②公認会計士に対する資格付与、③税務官公署勤務経験者に対する資格付与の3点に区分されると思います。
 この点について、日税連制度部は、本年3月21日付具申「税理士法改正要望項目(タタキ台)について」において、「税理士資格を取得しようとする者は、一切の例外なく最低1科目の税理士試験を受験すること。」という主張をしています。
 税理士となるための資質の検証は、税理士試験に拠ることを基本とすべきであるとの観点から、上記の制度部意見は尊重すべきだと思います。
 しかし、様々な立場にいる方に対して、一律に現行の試験を受験させるというスキームは現実的とはいえません。
 したがって、税理士試験の方式の改革と併せて、弁護士・公認会計士・税務官公署勤務経験者に対する資格付与制度のあり方を検討することにより、法改正議論の現実的な進展に繋がると思うのです。

(10/24)法人設立要件

資格法人の設立要件緩和の論点
 政府は、「規制改革推進のための3か年計画(改訂)」(平成20年3月25日閣議決定)において、「資格者法人の設立要件の緩和」という項目を設けて、「資格者による全国的な幅広い業務サービスを推進する観点から、一人法人について、国民のニーズ、資格者団体の要望、資格者の業務の実態を踏まえた上、検討を進める。」との方針を決定しています。
 また、「規制改革会議」は、本年7月2日に公表した「中間とりまとめ-年末答申に向けての問題提起-」の中で、「資格者制度」について、「時代の要請に応じた専門的かつ総合的なサービスを提供するため、従来からの資格者個人を中心とする業務形態からの転換も視野に入れた制度の見直しが必要である。」と記述して、資格者法人制度を充実させる必要性を示しています。
 その上で、現在の資格者法人の設立数からみて必ずしも活用が進んでいないという現状認識に基づいて、「資格者法人の設立要件の緩和を行い、個人事務所を中心とした業務形態から、事務所の法人化や大規模化を進めるビジネスモデルとして近代化を図っていく必要がある。」と指摘して、①一人法人制度の創設、②資格者法人社員の無限連帯責任の見直し、③資格者法人の社員資格の拡大を検討事項として掲げています。
 日税連は、年末に公表される「規制改革会議」の第3次答申のとりまとめに向けて、制度部及び規制改革対策特別委員会において税理士法人の設立要件緩和について検討を進めています。

●一人法人制度創設の可否
 資格者法人の設立要件に関する最大の論点は一人法人を容認するかどうかという点です。
 税理士法人制度は、平成13年の税理士法改正により、「複雑化・多様化する納税者の要請にこたえるため、税理士業務の共同化により、複数の税理士による多角的で継続的な業務提供や賠償責任能力の強化等を通じて、税理士業務に対する信頼性を高めるため」という趣旨により創設されました。
 したがって、法人格を付与する立法趣旨を逸脱してまで一人法人制度を創設する必用はないとする意見が多数であるように思います。
 一方で、一人法人が認められれば、事業の継続が容易になるというメリットがあることから、社員が二人以上でなければ設立できないとの規制は必要ないという考え方があります。
 ところで、平成14年に創設された弁護士法人制度は、資格者法人の中で唯一、弁護士一人による法人設立を認めています。
 弁護士法が一人法人を認めることとした理由については、税務や社会保険上のメリットに加え、事業の継続性の確保という説明がなされた経緯があります。
 弁護士法は、事業の継続を容易にするために、社員の死亡により「社員の欠乏」という法定解散事由に該当した場合には、清算人は、当該社員の相続人の同意を得て新たに社員を加入させて弁護士法人を継続させることができるという規定を設けています。(弁護士法第30条の24)
 一般に、資格者法人は合名会社に関する規定を準用しているのですが、会社法は、持分会社の社員が欠けた場合は法定解散事由としており、会社の継続も認めていません。(会社法第641条~第642条)
 しかし、弁護士法は、敢えて特則を設けて、新たな社員弁護士が、死亡した社員の遺族に対価を支払うことにより事業承継を可能とするためのスキームを設けたわけです。
 税理士法人の場合、一人法人の社員が死亡したときは、業務執行者が存在しなくなるのですから、直ちにすべての業務を行うことが出来なくなります。
 そのような不安定な組織を新設する積極的な意義はないと考えますがいかがでしょうか?
 社会保険労務士会や土地家屋調査士会が、一人法人制度の創設を要望していると伝えられていることもあり、税理士法人についても選択肢として一人法人を認めても良いのではないかという意見もあるようですが、将来に禍根を残さないように基本的な議論をすべきだと思います。

●社員の無限連帯責任の見直し
 法人設立要件緩和の第2の論点は、社員の無限連帯責任制の見直しについてです。
 現行法は、税理士法人の外部に対する責任について、合名会社に関する規定を準用し、社員全員に無限連帯責任を負わせています。
 しかし、現在、弁護士法人・特許業務法人・監査法人については、指定社員制が導入されており、指定社員以外の社員は有限責任とすることが可能となっています。
 たしかに、業務が専門化・高度化していく中で、自己が関与していない事案についてまで無限連帯責任を負うことは不合理であるという考え方にも一理あると思います。
 一方で、税理士法人の業務執行は、全社員の相互監視を前提として行うべきである上、この制度により大規模法人の出現を抑止する効果があることから、現行法を維持すべきであるという考え方もあります。
 いずれにしても、税理士法人の場合、弁護士法人や監査法人のような指定社員制がなじむのかどうかという基本的なポイントを検討しなければならないと思います。

●社員資格の拡大の是非
 第3の論点である社員資格の拡大については、公認会計士法が平成19年の改正により、公認会計士以外の特定社員を監査法人の社員とする途が拓かれたことを契機として検討されています。しかし、税理士法人の場合は監査法人とは事情が違うのですから、当面は、外部役員を迎えるための制度を創設する必要はないように思います。

(09/29)建議等

税理士法が定める建議の意義
 日税連は、毎年7月、翌年度分の「税制改正に関する建議書」を機関決定し、財務大臣・総務大臣他関係省庁に提出しています。
 広辞苑には、「建議」とは、「意見を申し立てること。また、その意見。」と記述されています。
 このやや古めかしい言葉は、大日本帝国憲法第40条の「両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得」との規定が語源になっているようです。
 すなわち、明治憲法下で、議院がその意思又は希望を政府に申し述べることを「建議」といったのです。

 一方、日本国憲法第16条は、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と規定し、国民の「請願権」を保障しています。
 この「請願権」とは別に、税理士、弁護士、公認会計士及び弁理士等の職業専門家の団体には、それぞれの分野について専門的知見を有していることから、これらの職業法の中に、下記の通り「建議」に関する規定が置かれています。

【税理士法第49条の11】(建議等)
 税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。
 (この税理士会の建議等の規定は、同法第49条の15により、日税連について準用されます。)

【弁護士法第42条】(答申及び建議)
 弁護士会は、日本弁護士連合会から諮問又は協議を受けた事項につき答申をしなければならない。
2 弁護士会は、弁護士及び弁護士法人事務その他司法事務に関して官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。

【公認会計士法第46条の9】(建議及び答申)
 協会は、公認会計士に係る業務又は制度について、官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。
【弁理士法第68条】(建議及び答申)
 弁理士会は、弁理士に係る業務又は制度について、経済産業大臣又は特許庁長官に建議し、又はその諮問に答申することができる。

 これらの規定はいずれも、職業専門家の団体は、その分野における専門家としての意見を官公署に対して建議し、又は官公署からの諮問に答申することができる旨を定めています。
 すなわち、職業専門家団体がその専門分野に関する法案の立案課程において専門家としての意見を述べ、その所管官庁がこれら意見を尊重することにより国民の負託に応えていくことが期待されているのです。
 重要なポイントは、上記の通り、弁護士会・公認会計士協会・弁理士会については、それぞれの士業制度に関する建議権を定めているのに対して、税理士会については、税理士制度のみならず、「税務行政その他租税に関する制度」についても建議することができる旨規定されている点です。
 したがって、日税連には、税務行政及び税制に関する専門的意見を集約し、これを毎年行われる税制改正法案の立案作業に反映させていく責務があると考えるべきだと思います。

●日税連の税制改正建議のあり方
 上述したとおり、日税連には、税理士法に基づく「建議権」が認められています。
 すなわち、日税連の税制改正要望は、一業界団体とし減税を求めるような次元のものではなく、「公平かつ合理的な税制の確立と申告納税制度の維持・発展」のために、法の要請に基づいて行う専門家団体の意見表明として位置付けなければなりません。
 また、税理士法に基づく建議は「権限のある官公署」に対して行うのですから、その相手先は、国税に関する税制改正要望であれば財務省主税局であり、また、地方税については総務省自治税務局ということになります。
 ところで、日税連の税制改正建議書は、その項目も多く(平成21年度の場合は67項目)、また大多数が継続要望事項となっています。
 いずれも、各税理士会から提出された意見を参考に、調査研究部における審議を経て取りまとめられたものであり、意見の内容も高度な水準を保っています。
 しかし、これらの意見が、毎年の税制改正に反映しているかどうかについてはいささか疑問を感じます。
 また、建議書自体もややマンネリ化しているうえ、意見表明のプロセスもセレモニー化しているように思います。
 今後は、日税連の税制改正意見を、出来るだけ法改正に反映させるための戦略も考えていかなければならないのではないでしょうか?
 例えば、基本構造に関わる事項と実務的な要請に関わる事項との区分や、緊急性を有する事項と中長期的な事項との区分等、建議書の構成について工夫があっても良いのではないかと思います。
 あるいは、課題ごとに別々の意見書を作成することも検討できないでしょうか。
 さらに重要なことは、財務省主税局が、行政庁として税制の企画立案を行っていく過程で、日税連の税制改正建議書を尊重するスキームを作ることです。
 そのためには、日税連と財務省主税局との間で、胸襟を開いた議論を積み重ねる必要があると思うのです。

(09/20)政治資金規正法

●政治資金監査制度の導入
 昨年12月に成立した改正政治資金規正法に基づき、来年より「政治資金監査制度」がスタートします。
 (「政治資金監査制度」の概要については、4月8日のブログをご参照下さい。)

 今回の法改正により、来年からは、「国会議員関係政治団体」の会計責任者に対して、新たに次のような責務が課されることになります。
①すべての支出について、「領収書等」を徴収し、「収支報告書」の要旨公表日から3年間保存しなければならない。
②すべての支出について、「領収書等」を徴し難い事情があるときは、「徴難明細書」(領収書等を徴し難かった支出の明細書等)を作成し、「収支報告書」の要旨公表日から3年間保存しなければならない。
③「収支報告書」については、人件費以外の経費で1件1万円を超える支出について、その明細を記載し、「領収書等」の写しと併せて、5月31日までに提出しなければならない。

 また、会計責任者は、「収支報告書」を提出するときは、あらかじめ、収支報告書・会計帳簿・領収書等について、「登録政治資金監査人」による「政治資金監査」を受けなければならないこととされています。
 したがって、「国会議員関係政治団体」の「収支報告書」については、「政治資金監査」が義務付けられることとなり、「監査報告書」が添付されていない「収支報告書」は違法ということになります。

 そこで、約4~5千団体といわれる「国会議員関係政治団体」は、必ず、「登録政治資金監査人」と「政治資金監査契約」を締結しなければなりません。
 「登録政治資金監査人」となることができるのは、税理士、弁護士又は公認会計士とされていますが、この制度の円滑な実施にあたって、とりわけ税理士に対する期待が大きくなっています。

 このような経緯を経て、本年9月1日より、「登録政治資金監査人」の登録申請の受付が始まっています。
 また、10月1日からは「国会議員関係政治団体」の届出が開始されます。
 現在、「政治資金適正化委員会」において、「政治資金監査マニュアル」の策定について審議が行われており、10月上旬には結論が出される見込みです。
 このマニュアルの確定を受けて、12月中旬頃より、「政治資金適正化委員会」が実施する法定研修が開催される予定です。

●政治資金規正法の沿革
 わが国の政治資金に対する規制は、昭和23年に制定された「政治資金規正法」が中心となっています。
 その後、昭和25年に、選挙運動を規制する「公職選挙法」が施行されました。
 さらに「小選挙区比例代表並列制」の導入に伴い、平成7年に施行された「政党助成法」が政党に対する国からの助成金について規定を設けています。

 もとより、憲法が「表現の自由」「政治活動の自由」を保障していることからみて、政治資金について法律で規制をするということは、許されるべきではないという基本的な考え方があります。
 しかし、政治資金に関する疑惑が後を絶たないことから、政治資金に対する合理的な規制は必要であると考えられるようになったようです。
 「政治資金規正法」は、戦後の民主化の過程で政治事情が混迷を続け、弱小政党の乱立と離合集散による政治腐敗行為が続出したことを契機として、昭和23年に議員立法によって成立しました。
 この法律の基本的な目的は、政治資金の明朗化を図り、政治資金の流れを国民の前に公開し、国民の監視と批判を仰ぐというところにあります。
 法律の名称が「規制」ではなく「規正」となっているのは、この基本理念を表しているからです。

 その後、「政治資金規正法」は、数次にわたって改正されていますが、30年近くの間大きな改正は行われませんでした。
 しかし、昭和40年代の「黒い霧事件」等の一連の政界不祥事を受けて、昭和50年改正法において、「政治活動に関する寄附の授受の制限」「政治資金の収支の公開強化」「個人献金に対する課税上の優遇措置」「政党・政治団体の概念の明確化」「政治団体の届出制の改善合理化」等の大改革が行われました。
 さらに、ロッキード事件の反省から、昭和55年には、「指定団体制の創設」「保有金制度の創設」等の改正が行われました。
 また、リクルート事件に端を発した政治改革の要請から、平成4年には、「政治資金パーティーの適正化」「政治資金の運用に係る制限」「政治団体が有する資産の公開」等の改正が行われました。
 その後、平成6年、平成11年にも所定の改正が行われました。

●平成19年法改正の経緯
 平成18年9月に成立した安倍内閣は、当初より政治資金に関する話題が多かったように思います。
 平成18年12月には、佐田玄一郎行革担当相が、自らの政治団体の政治資金収支報告書に、実際には活動していない事務所の経費等として、10年間で約7800万円の支出を記載していたことを指摘された問題の責任を取り辞職しました。
 また、平成19年3月に、松岡利勝農水相が、自分の資金管理団体が、議員会館内の事務所において1年間に500万円を超える光熱水費を計上していたことについて、「ナントカ還元水」が含まれているという国会答弁を行ったことが大問題となり、結局、5月に自殺をしてしまいました。
 さらに、赤城徳彦農水相は、父親の自宅を事務所として届出ていた後援会が、10年間で9千万円の事務所費を計上したことが問題となり、7月の記者会見で絆創膏を貼って登場したこと等が大きな話題となりました。
 一方、野党においても、平成19年1月に、角田義一参議院副議長が、自分の資金管理団体が受けた献金を、政治資金収支報告書に記載していなかったことの責任を取って辞任しています。

 このように、政治資金に関する不祥事が相次いで政治問題化したことを受けて、各政党において、再発防止策について検討が行われることになりました。
 この間、7月29日に実施された参議院選挙において、与野党逆転という結果が出たことが、政治資金規正法改正に大きな影響を与えることになったように思います。
 様々な議論を経て、10月12日、自民・公明両党は、1円以上の領収書を原則公開することを柱とする与党案をまとめました。この中には、総務省内に第三者機関を設置すること、公認会計士等による事前検査を導入すること等が含まれていました。
 その後、与野党における協議が行われ、11月7日の与野党合意が成立しました。
 この合意の中で、1円以上の領収書の公開は、当面、国会議員の政治団体に限定することが決められました。
これを受けて、議員立法により政治資金規制法改正案が策定され、12月19日の衆議院の特別委員会、20日の参議院の特別委員会の審議を経て、21日に可決成立したのです。

●政治資金規正法の問題点
 前述したとおり、政治資金規正法は、戦後間もない昭和23年に成立した法律です。
 今般の改正は、「国会議員関係政治団体」に対する新たな規正を盛り込むために、第3章の2という新しい章立てをし、第19条の7~第19条37という、31条項を新設したのですが、その基となる一般条項については、基本的な改正をしていません。
 そのため、いくつかの不合理が生じることになりました。

 例えば、第9条(会計帳簿の備付け及び記載)に、
 「政治団体の会計責任者は、会計帳簿を備え、これに当該政治団体に係る次の事項を記載しなければならない。」
 という規定を置き、会計帳簿の記載事項を法定しています。
 この内、支出については、「すべての支出並びに支出を受けた者の氏名及び住所(支出を受けた者が団体である場合には、その名称及び主たる事務所の所在地)並びにその支出の目的、金額及び年月日」を記載することとしています。
 つまり、会計帳簿には、支払先の氏名(名称)・支出の目的・金額・年月日とともに、支払先の「住所(所在地)」を記載しなければならないことが法律により決められているわけです。

 また、第11条(会計責任者等が支出をする場合の手続)には、
 「政治団体の会計責任者又は政治団体の代表者若しくは会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために支出をした者は、1件5万円以上のすべての支出について、当該目的、金額及び年月日を記載した領収書その他の支出を証すべき書面(以下「領収書等」という。)を徴さなければならない。」
 と規定されています。
 今般の改正法は、「国会議員関政治団体」については、第11条の「1件5万円以上のすべての支出」という規定を、「すべての支出」と読み替えることにより、1円以上の領収書等の徴収義務を課しているわけです。
 ところで、第11条による「領収書」の記載事項は、「目的」「金額」「年月日」とされており、「宛先」は含まれていません。
 つまり、宛先記載のない領収書も政治資金規正法上は合法であるということになります。

 以上、二つの例を挙げましたが、政治資金規正法が旧態依然としているために、「政治資金適正化委員会」において、「政治資金監査マニュアル」を策定する過程では、しばしば面倒な議論が起こっています。
 「政治資金監査」を実施する際の中心的な手続は、「領収書等」と「会計帳簿」の突合作業です。
 したがって、「政治資金監査マニュアル」には、どのような手順でこれらの突合を行うかを記載するのですが、「支払先の住所」が、会計帳簿の法定記載事項となっているため、一行でも住所が記載されていない箇所があれば、その会計帳簿は「記載不備」として指摘をしなければならないことになります。
 また、宛先が記載されていない領収書や「上様」と記されているものであっても、違法ではないのですから、そのような領収書をもとに監査を行わなければならないことになります。
 いずれも、一般常識からみて疑問のあるところですが、法律遵守が最優先である以上いたしかたないという話になっているようです。

 いずれにしても、国会議員関係政治団体にあっては、従来は、5万円以上であった領収証等の徴収義務が、一気に1円以上すべての支出に変更されるのです。
 また、今までは必ずしも徹底されていなかった領収書等の整理や会計帳簿の記載について、来年度からは、「政治資金監査」及び「少額領収書等の写しの開示制度」等を通じてより厳しく監視されることになるわけです。
 「登録政治資金監査人」としても、研修等を通じて法令遵守に努めなければならないのですが、その前に、政治団体の会計責任者の意識改革を啓蒙することが極めて重要であると思うのです。

(08/22)行政手続法

●行政手続法改正案
 政府は、本年4月11日に、「行政不服審査法」の全文改正案とともに、「行政手続法」(以下「行手法」といいます。)の改正案を国会に上程しました。
 行手法改正案は、事後救済手続の抜本改革を行うための行政不服審査法の改正と併せて、①一定の処分又は行政指導を求める制度、②違法な行政指導の中止等を求める制度を創設して、国民の行政に対する信頼を高め、行政運営における公正の確保を図るために提案されているものです。
 これらの法案は、いずれも本年の通常国会では審議が行われず、衆議院において継続審議となっていますので、「国税通則法」(以下「通則法」といいます。)改正案等の整備関連法案とともに、来月に招集される臨時国会において審議される見込みです。
 本稿では、行手法改正案の内、税務行政に関係があると思われる事項について検討したいと思います。

●「処分等の求め」
 行手法改正案は、第36条の3を新設し、新たに「処分等の求め」という制度を創設しています。

この新設条文は次の通りです。
【第1項】何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。

【第2項】前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
①申出をする者の氏名又は名称及び住所 ②法令に違反する事実の内容 ③当該処分又は行政指導の内容 ④当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項 ⑤当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由 ⑥その他参考となる事項

【第3項】当該行政庁又は行政機関は、第1項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

●立法趣旨
 今般の改正法案は、昨年7月に公表された「行政不服審査制度検討会最終報告」(以下「最終報告」といいます。)を基礎としています。
 (最終報告の全文は、Tax-Opinion資料室「司法制度改革」に掲載してあります。)

 最終報告は、第10章「行政手続法の改正」の中で、「一定の処分を求める申出」制度を設けることを提言しています。
 検討会では、平成16年の行政事件訴訟法の改正により、「非申請型の義務付けの訴え」が可能となったことと平仄を合わせるために、「非申請型の義務付けの審査請求」を創設することを検討していました。
 結局、この課題は、事後救済手続を定める「行政不服審査法」の問題というよりは、事前手続を定める「行手法」の問題として整理することになったようです。
 そこで、行手法第2章が定める「申請」とは別に、書面で具体的な事実を摘示して一定の処分を求める申出があったときは、行政庁は、その処分となる法令に照らして必要と認めるときは、その内容について検討し、その結果を踏まえて、当該処分をし、あるいは必要な行政指導をするなど適当な措置を採らなければならないこととし、その旨(または、適当な措置を採る必要がないと判断したときはその旨)を申出人に通知すべき旨を制度化し、国民の権利利益の保護をより厚いものとする制度を創設することとしたものです。
 すなわち、この制度に基づく申出は、行政の職権発動を促すものであると位置付けられます。
 なお、この申出があったときは、当該行政庁は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分(又は当該行政指導)をする義務を負うことになります。
 ただし、行政庁は申出に対する応答義務を負うものではないとされているほか、申出人に対する通知は処分性を有するものではないとされています。

●税務行政との関係
 行手法は平成6年に施行されましたが、「国税犯則事件に係わる処分及び行政指導」を全面的に適用除外としているほか(行手法第3条第1項第6号)、通則法第74条の2(行政手続法の適用除外)の規定により、税務行政については広範囲に適用除外とされています。
 しかし、新設された「処分等の申出」は、整備関連の通則法第74条の2の改正案において適用除外とされていません。
 したがって、法文上、この制度は税務行政についても適用されることになります。

 ところで、現在、実務慣行として行われている「嘆願書」は、通則法23条(更正の請求)の期間(通常は1年)を過ぎている場合で、通則法70条2項の減額更正の期間(5年)内であるときに、職権更正を促す手続きとして機能しています。
 現在の「嘆願書」は、法令に基づく手続ではないのですが、改正行手法が施行された場合には、第36条の3に基づく「処分等の申出」が、職権による減額更正を促す手続きとして機能することになるのではないかという意見があります。
(田中治稿「改正される行政手続法と税務行政手続への影響」・税理・2008年8月号・8頁以下、青木丈稿「義務付け裁決、処分庁に対する申出制度」・税務弘報・2008年9月号・68頁以下等)

 一方、「何人でもこの求めをすることができるとされているのは、この制度が、処分を求める権利を付与するものではなく、職権発動の端緒を得るにとどまるものとして位置付けられていることによる。」(宇賀克也稿「行政不服審査法・行政手続法改正の意義と課題」・ジュリスト・2008.7.15・9頁)という解説もされています。
 だとすると、この制度は、嘆願書に替わる制度として想定されているものではないのかも知れません。

 いずれにしても、この新設規定は、通則法の「更正の請求」とは本質的に異なる制度ですから、更正の請求の期間が1年間に制限されているという根本的な問題が解決するわけではありません。
 ただし、従来は全く法的根拠のなかった「嘆願書」が、改正行手法による法定の手続になるとするならば、それはそれとして一歩前進という評価もあり得ると思います。
 その辺りについては、臨時国会の審議の過程で明らかにしていただきたいと思います。

(08/01)補助税理士

●補助税理士制度創設の経緯
 平成13年の税理士法改正により「補助税理士制度」が創設されました。
 法改正前の勤務税理士は、雇用主たる税理士の指揮監督下で、税理士業務の補助業務を行う立場であって、税理士資格を有してはいても法律上の立場は一般職員と変わるところがないとされていました。
 しかし、勤務税理士とはいっても税理士法の適用を受ける税理士なのですから、その法的地位を明確にし、税理士として「税理士の業務」を行うことを可能とするための制度改正をすべきとの意見がありました。
 そこで、先の税理士法改正にあたって日税連が行った要望(「税理士法改正に関する改正要望書」平成12年9月21日理事会決定)の中に、「税理士事務所に勤務する税理士が多くなっている実態に鑑み、雇用者たる税理士の監督のもとに、補助者として『税理士の業務』(税理士法第2条)を行う勤務税理士に関する規定を整備する。」との項目が盛り込まれ、この要望に沿って法改正が実現したのです。

●補助税理士制度の内容
 改正法は、第2条第3項を新設し、「税理士法第2条第1項(独占業務とされる税理士業務)及び同条第2項(付随業務)の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人の補助者としてこれらの項の業務に従事することを妨げない。」と規定しました。
 また、税理士法第18条(登録)の関連省令を整備し、税理士の登録を次の3区分としました。(税理士法施行規則第8条)
(イ)社員税理士・・・税理士法人の社員となる税理士
(ロ)補助税理士・・・法2条3項の規定により、税理士又は税理士法人の補助者として常時同項に規定する業務に従事する者
(ハ)開業税理士・・・(イ)(ロ)に掲げる者以外の者

 なお、補助税理士については、その従事する税理士事務所の名称及び所在地又は税理士法人の名称及び所属事務所の所在地を登録することとされています。
 さらに、税理士法第40条(事務所の設置)の関連省令を整備し、補助税理士は、税理士業務を行うための事務所を設けてはならないこととされました。(税理士法施行規則第18条)

 すなわち、専ら、「他の税理士又は税理士法人」の補助者として業務に従事することとなる税理士は、「補助税理士」という区分により「従事する事務所」を定めて登録することになります。
 補助税理士は、従事する開業税理士(又は税理士法人)が委嘱を受けた事案について、自らの名において税理士業務を行うことができることになります。(税理士法基本通達2-8)
 ただし、補助税理士は、税務書類を作成して署名押印する場合には、従事する税理士事務所の名称(税理士法人の名称)を付記(税理士法施行規則第16条)するとともに、「補助税理士である旨」を表示する(税理士法基本通達33-1)必要があります。
 要するに、補助税理士は、補助者として従事する他の開業税理士(又は税理士法人)が委嘱を受けた事案について、自ら直接委嘱を受けなくても税務書類を作成して署名押印(所定の付記が必要)することが可能となり、補助税理士として税務調査に立会う権限も保障されているわけです。

●補助税理士制度の問題点と改正意見
 「補助税理士制度」の創設により、従来の勤務税理士は、依頼者からの委任又は所長税理士からの復委任を受けることなく、税理士として、税務書類作成及び税務代理業務を行うことが可能となりました。
 このことは、補助税理士自身のみならず、従事する事務所にとっても大きなメリットであり、依頼者の納税義務の適正な実現及び納税者の権利利益保護に資する観点から有益な制度であると考えられます。
 一方で、補助税理士として登録した者は、納税者から直接委嘱を受けて税理士業務を行うことができなくなる点が、補助税理士の権利侵害であるとして問題となっています。
 すなわち、若手税理士の多くが他の開業税理士(又は税理士法人)に勤務している状況にあって、彼等が「補助税理士」として登録することにより、例え僅かな件数であっても自ら委嘱を受けて税理士業務を行うことが閉ざされてしまうため、将来の独立開業が阻害される等の弊害があるという意見があるわけです。
 また、「補助税理士」という登録区分の名称も批判の対象となっています。

 要するに、補助税理士制度に関する様々な問題点は、①補助税理士が「他人の求め」に応じて税理士業務が行えないこと、②「補助税理士」という名称が適切でないこと、の2点に集約できると思います。

●何が問題なのか整理すべきだ
 問題の本質は、「補助税理士」として登録した者は、納税者から直接委嘱を受けて税理士業務を行うことができない点にあるとされています。
 しかし、法令は、他の開業税理士(又は税理士法人)の補助者として常時税理士法第2条第3項に定める業務を行う者を「補助税理士」と定義し、その者に対して補助税理士として登録することを求めているのであって、納税者から直接委嘱を受けて税理士業務を行う税理士は、補助税理士ではなく「開業税理士」として登録しなければならないと定めているのです。
 また、「補助税理士」として登録していた者が、開業税理士に該当することとなった場合には、遅滞なく、「開業税理士」に登録の変更を申請しなければならないこととされています。(税理士法第20条。税理士法基本通達20-1。)
 すなわち、法令は、「補助税理士」が直接委嘱を受けることを制限しているのではなく、直接委嘱を受ける税理士は「開業税理士」として登録することを定めているわけです。

 問題の所在は、税理士法施行規則第8条が、「常時補助者として業務に従事する者」と定めている「常時」という文言の解釈にあると考えられます。
 因みに、広辞苑には、「常時」とは、「いつも。平生。ふだん。」と記載されています。
 法令は、「常時」を、「100%」ないし「例外なく」と考えて制度設計しており、例え僅かでも直接委嘱を受けて税理士業務を行う者は、「開業税理士」として登録することを予定していると考えられます。
 ただし、「開業税理士」として登録した者は、税理士法第2条第3項の規定よる補助者として業務に従事することはできないものと解されています。(税理士法基本通達2-7)
 したがって、現行制度の問題点は、通常は勤務先の開業税理士(又は税理士法人)の補助者として業務に従事している者が、直接委嘱を受けて税理士業務を行う場合にどうすれば良いか?という点に帰結すると思います。

●解決策を探る
 これらの問題を解決するために、いくつかの改正意見が示されています。
 中でも一般的なものは、①現行税理士法第2条第3項は存置する、②登録に関する規定を整備して「補助税理士」という登録区分を廃止する、③補助税理士の事務所設置禁止規定及び税務書類等への付記に関する規定を廃止するというものです。(東京税理士会「補助税理士制度に対する改正意見」平成19年5月他)

 この内、東京税理士会意見書は、税理士法第2条第3項の規定は存置するとしながら、登録区分としての「補助税理士」の廃止を求めています。
 この意見を要約すると、ある税理士が、他の税理士(又は税理士法人)が受任した税理士業務について、登録に関わらず補助者として従事することを可能にすべきだということのようです。
 このような法令改正が行われれば、ある税理士が、日頃は、勤務先の開業税理士(又は税理士法人)の補助者として依頼者の委嘱を受けることなく税理士業務を行いながら、あるときは、自ら直接委嘱を受けて税理士業務を行うことも可能となり、一見、問題が解決するように見えます。

 ところで、現行制度のもとで「補助税理士」として登録した者は、日税連が備える税理士名簿と税理士証票に補助税理士である旨が表示され、従事する税理士事務所(又は税理士法人)の名称も記載されるため、どの補助税理士がどの開業税理士(又は税理士法人)の補助者であるかが明示されることになっています。
 しかし、上記改正意見の場合には、このことが外形的に明らかにされないこととなり、様々な不都合が生じる可能性があります。
 税理士制度の本質が代理人制度であることを考えた場合、税理士が、依頼者(委任者)の知らないところで別の税理士を補助者として従事させることを可能とする制度は受け入れ難いのではないでしょうか?
 なぜなら、税理士法第2条第3項の従事者は、事務所職員のような単なる履行補助者ではなく、限りなく代理人に近い立場にあると考えるべきだからです。
 したがって、現行税理士法第31条が、復代理人の選任をする場合に特別の委任を要することとしている規定との整合性からみて、補助者として税理士業務に従事させる場合には、依頼者に対する明示が必要だと思います。
 同様に、税務代理の相手方である税務官公署に対しても補助者を特定するための制度が必要になると思います。

 以上の考察から、私見では、登録を前提とした現行の補助税理士制度には一定の合理性があると考えます。
 ただし、補助税理士として登録していた者が、納税者の委嘱を受けて税理士業務を行うこととなった場合には、遅滞なく、開業税理士への登録変更を行うという運用を徹底する必要があります。
 また、その登録事務にあたって、申請者の権利を侵害するような運用は厳に戒めなければなりません。

 一方、第2の問題点とされる「補助税理士」の名称は、法律の定めではなく税理士法施行規則第8条に示されているものであり、制度上の本質論ではないと考えられますが、必要であれば財務省において名称変更を検討していただけば良いと思います。
 因みに、補助税理士に替わる名称としては、「事務所内税理士」あるいは「専属税理士」等はいかがでしょうか?

(07/07)規制改革会議

●「中間とりまとめ」公表の意義
 政府の規制改革会議(草刈隆郎議長)は、本年7月2日、「中間とりまとめ-年末答申に向けての問題提起-」を公表しました。
 掲げられたテーマは、①社会保障・少子化対策、②農林水産業・地域、③生活基盤、④国際競争力向上、⑤社会基盤、⑥教育・資格改革、⑦官業スリム化の7分野です。
 (「中間とりまとめ」のうち「教育・資格改革」部分をTax-Opinion資料室「規制改革」に掲載しました。「法務・資格」に関する記述は173頁以下です。)

 規制改革会議は、例年、年末に「規制改革の推進のための答申」を公表しますが、(昨年は12月25日でした。)、その答申は、翌年3月に閣議決定される「規制改革推進のための3か年計画」に反映することになります。
 現在の規制改革会議は、首相の諮問機関として、平成19年1月に設置されたものですが、民間委員による審議会は、平成7年4月に行政改革委員会に「規制緩和小委員会」が設置されて以来、「規制緩和委員会」(平成10年2月)→「規制改革委員会」(平成11年4月)→「総合規制改革会議」(平成13年4月)→「規制改革・民間開放推進会議」(平成16年4月)と組織を変革しながらも、政府の規制改革政策を支えるシンクタンクとして機能してきました。
 しかし、平成18年9月に小泉政権が幕を閉じるとともに、長年にわたってリーダーシップを発揮してきた宮内義彦氏が引退し、さらに、昨年9月の参議院選挙において自民党が大敗した後、福田内閣が誕生した頃から、行き過ぎた規制改革が格差を拡大したという議論が主流となり、政府の規制改革政策も軌道修正されつつあるように思います。
 今般の「中間とりまとめ」についても、「雇用や環境などの分野では規制強化の流れが加速。消費者行政推進を掲げる福田康夫首相も一段の規制緩和には慎重な立場とみられ、会議の推進力の減退が鮮明だ。」(7月3日。日経。)との評価が一般的となっています。

 その中で、規制改革会議は、今般、詳細な「中間とりまとめ」を公表することにより、「グローバル競争の激化や本格的な少子高齢化社会の到来を考えると、改革に残された時間は少なく、一時も立ち止まることは許されない。」との立場から、規制改革を推進するための議論を喚起するとともに、年末に策定する第3次答申に向けて各省庁との協議に入ることになります。
 日税連に対しても、既に、規制改革会議からヒアリングの要請が来ていますが、税理士制度を維持発展させるために、適切な対応をしていかなければならないと思います。

●税理士制度に関連のある項目
 今般の「中間とりまとめ」は、「法務・資格分野」の問題意識(総論)において、「資格制度を所管する省庁や資格者団体の視点ではなく、実際に資格者を利用する国民の視点に立って考えてみると資格制度の見直しはいまだ十分とはいい難い状況にある。」という現状認識を前提として、「資格者が担うべき業務の内容も専門化、高度化、多様化しており、国民のニーズに的確に対応していくためには、最新の知識や技術・能力の獲得などの資格者の個人的な資質の向上に止まらず、市場競争を通じ多様なサービスの提供が可能となるよう資格制度そのものの在り方を見直し、資格者が提供するサービスの質の向上を図る必要がある。」との方向を示しています。

 この方向性により、「時代の要請に応じた専門的かつ総合的なサービスを提供するため、従来からの資格者個人を中心とする業務形態からの転換も視野に入れた制度の見直しが必要である。」として、法人制度充実の必要性を示唆するとともに、「参入規制や競争制限にならないよう十分に配慮しつつ、資取得後の講習や継続研修の義務付けを行う」こと、「資格者の量的拡大と質の確保を図る」こと、「業務独占の業務範囲を可能な限り限定をかける」こと、「業務に必要な専門知識や能力を有することを確認するための能力担保措置を講じた上で隣接職種の資格者の参入を認めていく」こと等を求めています。

 この方針に基づき、重点的取組事項(各論)を記載しています。
 以下、税理士制度に関連のある部分をご紹介します。

【資格者法人の設立要件緩和】
 現在の資格者法人の設立数からみて必ずしも活用が進んでいないのが現状であると指摘し、「資格者法人の設立要件の緩和を行い、個人事務所を中心とした業務形態から、事務所の法人化や大規模化を進めるビジネスモデルとして近代化を図っていく必要がある。」との観点から、①一人法人制度の創設、②資格者法人社員の無限連帯責任の見直し、③資格者法人の社員資格の拡大を検討事項として掲げています。

【業務範囲の見直し】
 業務独占資格については当該業務サービスに係る競争が制限される弊害があるとし、「有資格者でないとできない業務範囲を可能な限り限定」し、「資格者間の垣根を低くすることにより各種業務分野における競争の活性化を図り、利用者である国民が多様なるレベルの業務サービスの選択が可能となるように業務範囲の見直しに取り組むべきである」として、①隣接法律専門職種の相互参入の促進、②隣接法律専門職種のADR代理人等としての活用、③隣接法律専門職種への行政不服審査制度の代理権の付与等を検討項目としています。

 これらの提言は、基本的には、市場競争の活性化を通じて、利用者のための資格制度の発展を図るという考え方に基づいています。
 しかし、税理士制度は、税理士法第1条(税理士の使命)が規定する「納税義務の適正な実現を図る」ための資格制度であることからみて、税理士の資質や納税者の利便性の向上が、市場原理に委ねることによって確保できるという論理には相当な無理があるように思います。
 ただし、一連の規制改革会議の提言は、部分的には傾聴すべき記述も散見されますので、今後、日税連は、納税者のための税理士制度を維持発展させる観点から、十分に検討していく必要があると思います。

(07/04)税理士法改正

●「税理士法改正要望項目」再検討諮問の経緯
 日税連制度部は、昨年6月26日付で、「税理士制度に関する意見-来るべき税理士法改正に向けての提言-」を森金次郎会長宛に具申しています。
  この提言は、いわば前執行部の「卒業論文」であり、平成13年法改正後の税理士制度を取り巻く環境を踏まえた「税理士法改正に関するグランドデザイン」を描いたものでした。

 その後、池田執行部がスタートしましたが、制度部においても新たな役員・委員による検討が進められ、上記具申をさらに進めた形で、本年3月21日付で、「『税理士法改正要望項目』(タタキ台)について」を具申しました。
  具申は、最優先項目として、①税理士の資格取得制度・あるべき試験制度、②税理士の信頼性の確保の2項目を挙げており、また、優先項目として、①補助税理士制度のあり方、②会計の専門家としての立場、③税理士会の自治のあり方、④税理士の代理権限、⑤職業賠償責任保険の義務化の5項目を掲げていました。

 池田会長は、この具申を受け、本年6月4日付で、制度部に対して、国税庁との協議における検討資料とするために、平成21年3月末を答申期限とし、具体的なテーマを示して、「税理士法改正要望項目」(タタキ台)の再検討について諮問をしました。

 (上記の、2007年6月制度部具申・2008年3月の制度部具申・同年6月の会長諮問は、Tax-Opinion資料室「税理士制度」に掲載してありますのでご参照下さい。)

 池田会長は、この経緯について、6月26日の理事会で次のように述べています。
 「税理士法改正につきましては、各単位会から来ていただいている役員・委員による議論を経て、制度部において『タタキ台』をまとめていただき、3月に具申をしていただきました。正副会長会は、この具申に対しまして、新たに諮問をいたしました。
示された「タタキ台」について、この部分はもう少し理論構築をして下さい、この部分は規制改革と整合性が取れますか? この部分は国民の利便性に適っていますか? この部分は急ぐんですか? 等、いろいろな面で再検討をお願いしました。
 いくつかの条件がそろわなければ法改正は実現しません。また、国税庁との協議を通じて理解を得なければなりません。さらに、主税局が改正法案を立案する場合、国民のための法改正であり、また、緊急性を有するものでなければ国会審議に耐えられないということも考えなければなりません。
 各単位会の制度部におきましては、機関決定をせずに、様々な意見を日税連制度部に上げていただきたい。これを制度部でまとめて答申をしていただき、これを待って、正副会長会で検討を行い、プロジェクトチームを立ち上げていくという手順を考えているところです。」

●税理士法改正までの道程
 「税理士法」は、旧税務代理士法を改正する形式により立法され、昭和26年6月15日に公布され、同年7月15日に施行されました。
 昭和26年当時のわが国は、終戦後の連合国軍占領下にあり、あらゆる政治経済制度の変革とともに、税制も急激に変貌した時代でした。シャウプ勧告は、かつての賦課課税中心から申告納税中心の税制への改革と同時に、税理士制度の導入を求めました。
 これらの要請を受け、政府は、昭和26年2月に新しい税理士法案を用意し、その基本方針及び要綱を決定しました。
 この法案は、衆議院において、議員立法により提案され、同年3月から5月の国会審議を経て成立しました。

 国会に上程される法律案には、その提出者が「内閣」である「政府提案」(閣法)と、議員が提出する「議員立法」(衆法・参法)の2種類があります。
 上述したとおり、昭和26年の税理士法案は、形式的には議員立法によっていましたが、その立案に当たっては大蔵省及び国税庁が深く関与していました。
 税理士法は、その後、数次にわたる改正が行われていますが、いずれも政府提案により立法されています。
 ところで、財務省は、本年3月31日付で、規制にかかわる法律ごとの見直し年度・見直し周期を定めています。
 (この件については、財務省のHPをご参照下さい。
 これによると、税理士法の見直し周期は5年とされており、次回の見直しは平成23年度となっています。
 この方針に基づき、平成23年度には、政府提案による税理士法改正が行われることになると思われます。

 税理士法の所管官庁は、財務省主税局です。
 したがって、税理士法改正を行うためには、税務行政の執行当局である国税庁から、財務省主税局に対して法改正要望がなされることが前提となります。
 その前段として、日税連と国税庁との協議が行われることになります。

 因みに、平成13年の税理士法改正の場合は、下記のような経緯によっています。

 平成 7年6月13日  日税連「税理士法改正に関する意見(タタキ台)」を作成
 平成 9年4月15日  日税連「税理士法改正に関する意見(タタキ台)の審議状況」を公表
 平成10年1月13日 日税連「税理士法改正対策特別委員会」を設置

   〈この間、主税局・国税庁・日税連の3者による勉強会を26回実施。〉
   〈一方で、自民党「税理士制度改革推進議員連盟」による検討会を16回開催。〉

 平成12年6月7日  「税理士法改正に関する意見(タタキ台)」等に関する日税連と国税庁の協議要旨を公表。
 平成12年9月21日 日税連理事会「税理士法に関する改正要望書」を機関決定。
 平成12年12月7日 国税庁が大蔵省主税局に「税理士制度改正要望」を提出。
 平成12年12月14日 与党3党が決定した「平成13年度税制改正大綱」に税理士法改正を明記。
 平成13年3月9日  「税理士法の一部を改正する法律案」閣議決定
 平成13年4月11日 参議院本会議で同法案が可決。
 平成13年5月25日 衆議院本会議で同法案が可決。
 平成13年6月1日  公布。
 平成14年4月1日  施行。

●制度部に対する諮問内容
 冒頭にご紹介した日税連の税理士法改正への取組み方針は、このような法改正の道程を考慮して決められたものであり、その第一段階が、今般の制度部に対する諮問であると考えられます。
 すなわち、池田執行部は、平成23年度を目途とする税理士法改正の実現を目指して、本格的に始動したわけです。

 制度部に対する諮問内容は、下記のとおり22項目に及んでいます。
 今後、各税理士会の議論を経て、日税連制度部による検討が行われ、法改正項目の抽出及び内容の取りまとめ作業が進められることになります。

 1.税理士の資格取得制度、あるべき試験制度
  ①弁護士に対する資格付与・通知弁護士制度
  ②公認会計士に対する資格付与
  ③税務官公署職員の試験免除のあり方
  ④税理士試験の受験資格要件のあり方
  ⑤税理士試験制度のあり方
 2.税理士の信頼性の確保
  ①研修の受講・税務支援従事の義務化
  ②税理士資格の更新
 3.補助税理士制度のあり方
  ①補助税理士制度
 4.付随業務たる会計業務のあり方
  ①付随業務たる会計業務
 5.税理士会の自治のあり方
  ①支部の合併・分割の要件
  ②総会決議取消権の廃止
  ③長期会費滞納会員に対する退会処分
 6.税理士の代理権限
  ①本人訴訟における補佐人制度
  ②「認定司法書士」「付記弁理士」に類似する制度の是非
  ③補佐人による尋問
  ④税理士法上の代理権限と国税通則法上の代理権限との関係
  ⑤電子申告送信代理業務の位置付け
 7.職業賠償責任保険の義務化
  ①職業賠償責任保険の義務化
 8.追加して検討すべき項目
  ①税理士法人の一人法人の是非
  ②税理士法人の「社員の無限連帯責任」「社員の競業禁止」
  ③「登録要件としての登録前修習制度」又は「登録後の登録時研修の義務化」
  ④報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止

(06/24)税理士法人制度

●規制改革と税理士法人制度
 日税連が公表した登録事務事績によると、平成19年度末の税理士法人数は、主たる事務所1,548、従たる事務所 622となっています。
 平成14年4月にスタートしてから6年経過した税理士法人制度ですが、順調に普及しているようです。

 我が国で最初に士業法人制度が創設されたのは、昭和41年の改正公認会計士法に基づく「監査法人」でした。
 監査法人は、昭和40年の山陽特殊製鋼倒産事件等を契機に、株式会社に対する組織的監査の導入を求める声に応えるために創設されたもので、同時に検討されていた商法監査(昭和49年に導入された)に対応するためのものでもありました。
 一方、弁護士をはじめとする法律専門職の法人化は、政府の規制改革政策により導入が検討されてきました。
 平成10年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」は、法務関係の措置事項として、「弁護士事務所の法人化、広告制限の緩和ないし撤廃につき、検討を行い、平成10年度中に結論を得て、これを踏まえ、速やかに所要の措置を講ずる。」と記載しました。
 さらに、平成12年3月31日に再改訂された「規制緩和推進3か年計画」は、法務関係の措置事項として、「弁護士事務所の法人化の具体的在り方等につき、さらに調査・検討を進め、これを踏まえて、速やかに所要の法的整備を講ずる。」と記載しました。
 また、業務独占資格の横断的見直しという項目において、様々な規制緩和を求めていましたが、その一つに、「司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士について法人制度の創設を検討する。」という措置事項を掲げていました。
 この閣議決定を受けて、平成13年頃に各士業法が改正され、弁護士法人・司法書士法人・土地家屋調査士法人・税理士法人・社会保険労務士法人・特許業務法人・行政書士法人が創設されたのです。

●税理士法人制度創設の経緯
 税理士業務の共同化については、監査法人制度が創設されたこともあり、昭和40年代から検討が行われており、日税連税理士制度調査会の「わが国における税理士制度のあり方についての答申」(昭和43年12月)や、日税連税理士法改正対策委員会の「税理士法改正に関する第一次試案」(昭和45年7月)等にも法人制度創設を求める意見が記載されていました。
 しかし、昭和55年の税理士法改正では、税理士事務所の法人化は盛り込まれないこととなりました。
 ただし、国会審議の過程で議論が行われており、昭和55年2月の衆議院大蔵委員会では、「税理士法人については、社会的な必要の度合や、税理士業務の性格等を勘案しつつ、今後更に検討を行うこと」との附帯決議が採択されています。(参議院も同様)
 その後も、日税連や各税理士会で法人化の検討が続けられていたのですが、上述したとおり、平成9年以降の業務独占資格に対する規制緩和の流れを受けて、時を同じくして検討されていた税理士法改正の項目に取り上げられることになったわけです。

 平成13年の税理士法改正における、税理士法人制度創設の立法趣旨は、「複雑化・多様化する納税者の要請にこたえるため、税理士業務の共同化により、複数の税理士による多角的で継続的な業務提供や賠償責任能力の強化等を通じて、税理士業務に対する信頼性を高めるため」とされています。
 すなわち、①高度化する依頼者ニーズに応えるため、②事務所経営の継続性を図るため、③スケールメリットを図るためという目的をもって税理士法人制度が法制化されたのです。
 また、税理士法人は、当時の商法の規定による合名会社の法理に基づいて制度設計されています。
 したがって、①設立は準則主義であり、②社員は出資者かつ業務執行者であり、③社員は外部に対して無限連帯責任を負うこととされています。
 なお、当時、日税連内部では、大規模法人の出現により業界秩序が乱れることを懸念する声があり、社員の総数を制限すべきではないかという議論がありましたが、規制緩和の潮流の中で受け入れられませんでした。

●税理士法人制度の課題
 税理士法人制度については、次のような課題があります。

 第1に、一人法人の是非です。
 本年3月25日に閣議決定された「規制改革推進のための3か年計画(改訂)」は、「資格者法人の設立要件の緩和」という項目を掲げ、「資格者による全国的な幅広い業務サービスを推進する観点から、一人法人について、国民のニーズ、資格者団体の要望、資格者の業務の実態を踏まえた上、検討を進める」と記載しています。
 社会保険労務士会や土地家屋調査士会では、一人法人を容認する方向で検討に入っているようです。
 日税連も、上記閣議決定に対応するため、規制改革対策特別委員会及び制度部において検討を行っています。

 第2の課題は、社員の無限連帯責任規定を維持するかどうかという問題です。
 弁護士法人については、当初より指定社員制度が設けられており、依頼者に対して指定社員の通知をした場合には、その指定社員のみが無限連帯責任を負うことが可能となっています。
 また、平成19年の公認会計士法改正により、指定社員のみが無限連帯責任を負うこととする有限責任監査法人を創設しました。
 これらの立法例との関係で、税理士法人についても、指定社員制度を導入すべきではないかという意見が出てきています。

 第3に、競業禁止規定の見直しです。
 現行税理士法は、第48条の14(社員の競業の禁止)で、「税理士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の税理士法人の社員となってはならない。」という規定を置いています。
 この規定により、税理士法人の社員は、たとえ自分の親族等からの依頼であっても個人として税理士業務を行うことは出来ないこととなっています。
 一方、弁護士法人の場合は、他の社員の承諾があれば社員の競業禁止が解除されることとされています。
 また、監査法人の場合も、平成19年の法改正により、非監査業務については、他の社員の全員の承認があれば、社員が監査法人の業務範囲に属する業務を行うことが可能となりました。
 さらに、会社法においても、持分会社の業務執行社員の競業禁止規定は、他の社員全員の承認又は定款規定によって解除することが出来ることとなっています。
 これらの立法例からみても、税理士法人の社員の競業禁止規定については、見直す必要があるのではないかと思います。

(06/21)法務博士

法務博士と税理士試験の一部免除
 5月24日のブログで、法科大学院修了者(法務博士)で司法試験に合格出来ない者が急増していることを指摘しました。
 また、平成18年12月13日に公表された自民党司法制度調査会の提言が、これらの者について「隣接法律専門職者として活躍しうるための方策を検討することも必要となろう」と記載していることに対する日税連の対応方針を説明しました。
 この記事の中で、「法科大学院修了者が授与される『法務博士』は、税理士試験の一部科目免除の対象となる『修士の学位等』には該当しませんので、税理士法による一部科目免除の規定の適用は受けないことになっています。」と記述していました。
 しかし、平成15年に「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」が施行されたことに伴い、「税理士法施行規則」第2条の2第3項を改正し、「税理士法第7条第2項及び第3項に規定する文部科学大臣の定める学位で財務省令で定めるものは、学位規則(昭和28年文部省令第9号)第5条の2に定める修士(専門職)の学位又は法務博士(専門職)の学位とする。」と定めています。
 したがって、現行法上、法務博士についても、税理士法第7条第2項による「税法に属する科目等」の一部免除の適用があり、税法に属する科目等に関する研究による論文を提出し、国税審議会の認定を受けた場合には、税理士試験の税法2科目が免除されることになります。
 5月24日のブログの記述に重大な誤認がありましたことを、お詫びいたします。
 ただし、法科大学院の履修科目の中に「租税法」等が含まれているとしても、法科大学院修了者が、国税審議会の認定を受けるための研究論文を提出することは極めて稀であると考えられますので、実際にこの規定が適用される事例は殆どないと思われます。

●法曹養成制度改革の方向性
 現在、自民党司法制度調査会の「法曹養成・法曹教育及び資格試験のあり方に関する小委員会」において、「2010年(平成22年)までに司法試験合格者を3000人とする」とした「司法制度改革推進計画」(平成14年閣議決定)を見直すかどうかについて議論が行われています。
 今後、法曹養成制度の改革にあたっては、数より質を重視した方向で検討されることになる見込みです。
 いずれにしても、司法制度改革の中心的な課題である法曹養成制度のあり方について、今秋以降、大議論が展開されることになると思います。
 この議論にあたっては、法科大学院のあり方も重要な論点となります。
 その中で、法科大学院修了者(法務博士)で司法試験に合格出来なかった者をどのように活用すべきかという点も検討されることになると思います。
 日税連としては、税理士試験の免除制度について、現行水準を拡大することには反対していくことを明確にしています。

(06/06)特殊支配同族会社

●民主党が改正法案を提出
 6月4日午後、民主党は、参議院に「法人税法の一部を改正する法律案」を提出しました。
 改正法案は、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度を廃止するために、法人税法第35条を削除する内容となっています。

 この法案の趣旨は、次の通りです。 
 特殊支配同族会社の業務主宰役員に対して支給する給与の額の損金算入を制限する制度(いわゆるオーナー課税制度)については、
 ①中小企業に過大な負担を生じさせるものであり、さらに、実質的な一人会社とはいえない中小企業にまで広範に適用が及ぶ結果となっており、中小企業の活性化を阻害する要因となっていること
 ②我が国の租税体系における整合性という点において問題があり、法人課税上の新たな不公平を生じさせるおそれのある制度となっていること
 等にかんがみ、これを廃止する必要がある。

 なお、この改正法の施行により歳入減となる額は、平年度約160億円の見込みとのことです。

 民主党の発議者の一人である大塚耕平参議院議員は、記者会見で、「中小企業の経営者の給与について、課税強化するとして突然出してきた、所得税と法人税を混同した論理に基づくたちの悪い『オーナー課税』を廃止するもの」と改正法案の意味を説明しました。

 この法案は、参議院では可決される可能性が高いのですが、衆議院で否決される(又は廃案となる)ことは確実です。
 しかし、法人税法35条の廃止法案が国会に上程されたことの意義は極めて大きいものがあると思います。
 国会も会期末を迎え、参議院における問責決議案の提出等、政局含みとなってきましたが、あと1週間、最後まで国民のための審議を進めていただきたいと思います。

(05/24)法科大学院

●法科大学院制度の問題点
 5月21日のブログで、政府の法曹人口拡大政策がトーンダウしつつあることを指摘しました。
 そうはいっても、既に決められた方針に従って、法曹人口の大幅増員を前提とした新制度は稼働しているのであり、平成16年には法科大学院制度が導入され、平成18年度からは新司法試験が実施されています。
 法科大学院は、当初、法曹養成制度改革のために議論されてきました。
 しかし、いつの間にか、所管官庁が文部科学省となり、その位置付けも法曹養成機関から高等教育機関へと変わってしまったように思います。

 現在、法科大学院は74校あり(内国公立25校+私立49校)その定員総計は1学年当たり約6千人です。(平成18年度の入学者数は、5784人(内法学既修者2179人+法学未修者3605人)でした。)
 これに対して、新制度以後の司法試験合格者数は、平成18年度 1558人(旧試験549人+新試験1009人)、平成19年度 2009人(旧試験248人+新試験1851人)でした。
 旧試験の経過措置や、既修者(2年)と未修者(3年)の修業年限の相違等の事情もあり、単純には計算できないのですが、公表されている新司法試験合格率は、平成18年度 48.3%、平成19年度40.1%となっています。
 本年5月14日~18日に、3回目となる新司法試験が行われ、6261人が受験しましたが、本年度の合格率は3割台に低下する見通しだそうです。(5月14日。読売。)
 法科大学院制度の検討段階では、新司法試験の合格率は、アメリカのロースクール並みの70%程度になると想定されていましたが、現実の数字はかけ離れたものとなっています。
 法科大学院制度に対しては、大学の経営コストや、法曹の質の低下等、様々な問題点が指摘されていますが、最大の問題は、「法科大学院修了者で司法試験不合格者」が大量生産される点です。
 法科大学院修了者には、「法務博士」という学位が授与されることになっていますが、司法試験に合格出来なかった法務博士が加速度的に増加していることは紛れもない現実です。

税理士制度との関係について
 自民党司法制度調査会の「法曹養成・法曹教育及び資格試験のあり方に関する小委員会」は、法科大学院の最初の修了者に対する新司法試験の結果が公表されたことを受けて、平成18年12月13日付で、「新たな法曹養成制度の理念の実現のために」という提言を取りまとめています。
 (提言の全文は、Tax-Opinion資料室「司法制度改革」に掲載してありますのでご参照下さい。)

 提言は、法科大学院制度を中核とする新たな法曹養成制度は、総じていえば、順調な滑り出しをしたと評価できるとしながらも、「教育内容・方法」「成績評価及び修了認定」「入学者選抜」「認証評価」等における様々な問題点を指摘しています。
 この中で、「法科大学院修了者の活用」について次のように述べています。
 「たとえ法科大学院が充実した教育を行い、厳格な成績評価及び修了認定を行ったとしても、司法試験が試験である以上、結果的にこれに合格しない者も発生せざるを得ないが、結果的に司法試験に合格しなかった者であっても、それぞれ、法科大学院で学んだことを社会で生かし、その能力を十分に発揮できるようにしていくべきである。また、法科大学院修了者が全て法曹をめざす必要はなく、それぞれが、法科大学院で身に付けたことを多様な分野で生かしていくということも期待される。
 そのためには、今後、法科大学院の教育の充実や厳格な成績評価と修了認定の実施により、法科大学院を修了している以上、専門職大学院修了者にふさわしい法律的素養を身に付けているという社会的評価を得ることを前提として、国家公務員、地方公務員の採用の在り方を検討するとともに、経済界や隣接法律専門職者等の意見に配意しつつ、立法、企業法務の分野、その他隣接法律専門職者として活躍しうるための方策を検討することも必要となろう。」

 このように、法科大学院を修了したものの司法試験に合格しなかった者をどのように活用すべきかについては、制度創設当初から問題視されていたのです。
 提言は、法科大学院の修了者が、隣接法律専門職者として活躍しうるという趣旨の記述をしていますが、法科大学院の実態からみて、修了したからといって税理士となるための専門的知識を備えていると考えるわけにはいかないと思います。
 現行税理士法は、第7条(試験科目の一部免除)において、「税法に属する科目」又は「会計学に属する科目」に関する研究により「修士の学位」等を授与された者に対しては、国税審議会の認定を経て、それぞれの科目について税理士試験科目の一部を免除することとしています。
 しかし、法科大学院修了者が授与される「法務博士」は、税理士試験の一部科目免除の対象となる「修士の学位」等には該当しませんので、税理士法による一部科目免除の規定の適用は受けないことになっています。
 (この点については修正記事があります。)
 日税連は、法科大学院修了者に対する新たな税理士試験免除制度等を設けることには反対する立場を明確にしています。
 また、新たな法曹養成制度の実施に伴い、将来的に、弁護士が大幅に増員されるとすれば、必ずしも税理士となる資質の検証を経ないまま税理士資格を得る者が増えていくことに繋がるとの観点から、弁護士に対する税理士資格の付与(税理士法第3条第1項第3項)についても見直さなければならないという意見が強くなっていくように思います。

(05/21)法曹人口

●法曹人口拡大政策は転換されるのか?
 鳩山邦夫法務大臣は、昨年来、法曹人口拡大政策に異論を唱える発言を続けています。
 昨年9月4日及び11日の閣議後記者会見で、日本は訴訟国家であってはいけないとの観点から、司法試験合格者を年3千人とするのは多すぎると発言しました。
 さらに、10月23の日参議院法務委員会における所信表明演説の中で、「司法試験の合格者数については、すでに閣議決定されているとおり、平成22年ころに、新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、3千人程度とすることを目指してまいります。なお、その後の将来的な法曹人口のあり方については、我が国の経済社会の法曹に対するニーズの観点、法曹の質の確保の観点、3千人では多すぎるのではないかという観点から検討すべき問題であると考えております。」と述べています。
 この問題は、本年2月に行われた日弁連会長選挙でも大きな争点となりました。
 当選した、宮崎誠会長は、2月8日の記者会見で、「法的ニーズが拡大しておらず、法曹人口のペースダウンが必要。」として、「2010年に司法試験の合格者を3000人にする政府の方針の見直しを求めたい。」と述べています。
 このような経緯から、鳩山法相は、本年3月25日の閣議後記者会見で、「やはり3000人というのは多すぎるのではないか」と述べ、法務省内に研究会を設け、見直しを検討する方針を示しました。
 一方、自民党司法制度調査会は、「法曹養成・法曹教育及び資格試験のあり方に関する小委員会」においてこの問題の検討を行っています。
 2月5日の同小委員会で、保岡興治小委員長(司法制度調査会最高顧問)は、「法曹の増員と育成は、司法制度改革の中核であります。ルールとフェアプレイの精神で、司法制度改革を推進しなければなりません。」と述べ、鳩山法相の発言を牽制しました。

●司法制度改革の潮流と法曹人口増員政策
 我が国の司法試験合格者は、昭和30年代後半から平成2年頃までの間、概ね500人程度で推移してきました。
 すなわち、かつて、我が国は、政策的に法曹人口を抑制してきたのです。
 これに対して、高くて遅い日本の裁判制度は国民のニーズに応えていないのではないかという批判が噴出し、そこで、平成3年に設置された「法曹養成制度等改革協議会」において、法曹三者(最高裁・法務省・日弁連)による法曹人口増員に関する検討が行われることになりました。
 協議会では、6年に及ぶ遅々とした議論を経て、平成9年10月になって、漸く、司法試験合格者数を1000名程度に増員するという法曹三者協議が整ったのです。
 その後、法曹人口の増員問題は、平成11年の「行政改革推進本部規制改革委員会」の第2次見解を受けた「規制改革推進3カ年計画」(平成12年閣議決定)を契機として官邸主導で進められることとなり、平成13年の「司法制度改革審議会」最終意見書を経て、「司法制度改革推進計画」(平成14年閣議決定)の中に「2010年(平成22年)までに司法試験合格者を3000人とする」ことが明記されました。

 「司法制度改革推進計画」に基づく立法措置により、裁判の迅速化、仲裁制度改革、刑事訴訟手続改革、法テラスの開設、行政訴訟制度改革、裁判員制度の創設、知的財産高裁の設置、認証ADR制度の創設等、凄まじい勢いで改革が推進されてきました。
 また、法曹人口の大幅増員は、政府の規制改革推進政策の中でも重要なテーマとして位置付けられてきました。
 そのような潮流の中で、法科大学院と新司法試験制度の創設を中心とする法曹養成制度改革が行われたのです。
 あれから6年が経過し、政権も、小泉内閣→安倍内閣→福田内閣と変遷しました。
 冒頭に紹介したとおり、鳩山法相のスタンスは、法曹人口拡大政策の転換です。
 また、日弁連も法曹人口増員政策の見直しを歓迎しています。
 このような事情にあって、今後、自民党司法制度調査会がどのような結論を出すのか注目したいと思います。

●弁護士は足りないのか?
 「司法制度改革推進計画」の基本方針は、「明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後監視・救済型社会への転換」です。
 我が国の社会経済の構造改革を推進し、自由かつ公正な社会を実現するためには、国民の視点から司法制度を抜本的に改革することが不可欠であるとされ、その中心課題の一つが「法曹人口の拡大」とされてきたのです。
 しかし、我が国の法曹はそんなに不足していたのでしょうか?
 少なくとも、適正な法曹人口がどのくらいであるかという冷静な議論は行われていなかったのではないでしょうか?
 当時、「法曹1人当たりの国民の数」の国際比較資料がよく引用されました。
 例えば、平成13年6月の司法制度改革審議会意見書には、日本が6300人であるのに対し、アメリカ 290人、イギリス 710人、ドイツ 740人、フランス 1640人(いずれも1997年の資料)という数字が紹介され、我が国の法曹がいかに少ないかが強調されていました。
 しかし、我が国には、税理士や司法書士等の隣接士業制度があるのですが、アメリカにはこのような制度はありません。我が国の隣接法律専門職の数を法曹に加えて計算すれば、これらの数字は全く異なってくるはずです。
 また、当時、企業法務の重要性が指摘され、いわゆる企業内弁護士が大量に必要になるという意見がありました。
 しかし、本年3月25日の自民党司法制度調査会におけるヒアリングで、日弁連や経団連は、データを基に、企業内弁護士の需要が全く伸びていない実態を示しました。
 たしかに、当時も問題とされていた弁護士の地域偏在が解決されていないことは事実です。
 しかし、日弁連の説明によれば、弁護士を増やしたからといって皆が過疎地に行くわけではないので、司法試験合格者の増員は解決の決め手にはならないとのことです。
 感覚的に整理すれば、過疎地では相変わらず弁護士は足りないが、都市部では既に供給過剰になっているということなのではないでしょうか。

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